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【48万4千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
第七章 地底竜とわがままドワーフの姫

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第一話 ザルツブルクの洗礼

平原には、暴風が鳴いていた。


空を裂くような咆哮と、地を揺らす重低音の足音。新たな戦場は、勇者たちに歓迎など示さない。


新大陸、魔法国家ザルツブルク。


その名は、魔法文明の粋を集めた浮遊都市として知られていた。だが、勇者アルベルト、村人リスク、シスターマリアの三人が降り立った場所は、その中心ではなかった。


人の姿なき外縁《灰の平原》。


それはかつて、禁術研究に用いられた実験区画。今は魔力の暴走により腐敗し、常に濃い魔力と灰が漂う、廃墟と化した死の大地である。


「っ……こいつら、普通じゃない……!」


リスクが荒れた地面を蹴り、毒針を構えながら後退する。


目の前に立ちはだかるのは、全身を灰色の肉で覆われた巨体サイクロプス

ドラゴンにの右肩には、漆黒の鎧をまとい、長剣を携えた魔物使いドラゴンハンターが騎乗していた。


挿絵(By みてみん)


名前 サイクロプス

体力 :2500

攻撃 : 1200

防御 : 500

素早さ:600


この世界で魔力結晶によって筋力が異常強化されており、従来のサイクロプスより2倍の打撃力を誇る。片目が魔導視で、魔力の流れを見ることができるため、詠唱やチャージ魔法が読まれやすい。


挿絵(By みてみん)


名前 ドラゴンハンター

体力 :2800

攻撃 : 1100

防御 : 840

素早さ:900 固有スキル ドラゴン(状態異常スキル不可)


この世界でかつて竜退治で名を馳せた古代戦士の亡霊が魔族に堕ちた存在。魔物を操る能力がある。



「まるで、魔法国家の初陣歓迎ってところだな……」


アルベルトが剣を構えながら、額の汗をぬぐう。


「それにしちゃ、手荒すぎるでしょ!」

リスクは空気のように存在を消した。


「主の御名において裁きを……神よ、偽りの魂に鉄槌を――!」


「《神聖なる審判――セイクリッド・ジャッジメント》!!」


ジャキーン!


濃い魔法濃度によりシスターマリアの魔法が弾かれ、灰の平原に黒煙が上がる。


彼らに与えられた“洗礼”は、生半可なものではなかった。


だが、この絶望の中、地響きと共に金属の槌音が空を割る。現れたのは、小柄な少女。

両のツインテールを揺らしながら、巨大な金槌を肩に乗せて、地上に降り立った。


挿絵(By みてみん)


「ったく、地上の勇者ってこんなザコ? 笑わせないでよ!」


ツインテールを翻し、ドワーフ姫カンナ・アイゼンベルグは軽く跳ねるように前へ出る。


身長はアルベルトの胸ほどしかない。だがその背に負った金槌は、彼女の何倍もの重量を持つ神器だった。


その名も


 《グラン=ツァンハンマー》。ドワーフ王家に代々伝わる、重力制御魔石を内蔵した特級魔導兵器。


 サイクロプスが咆哮しながら拳を振り上げる。地面が割れ、岩が飛び散る。


「うるさいっ! 黙りなさい!」


カンナの目が怒りに燃える。すると、金槌が蒸気を吹き出しながら輝き始めた。


重圧撃グラヴィティクラッシュ

 カンナが金槌を振り下ろした瞬間、空間が歪んだ。重力が一点に集中し、サイクロプスの巨体が地面に叩きつけられる!


 「ぐおおおおおっ!?」

 サイクロプスの膝が砕け、大地がクレーターのように凹む。


鉄壁連槌撃ハンマーラッシュ

 間髪入れずに、カンナの攻撃が続く。両手で金槌を自在に操り、回転しながら連撃!


 ゴゴゴゴゴ!


 金槌の連撃がサイクロプスの胴体に炸裂し、鎧のように固まった魔力皮膚が剥がれていく。


轟天砕撃ごうてんさいげき


「天を震わせ、大地を砕く!王女ナメんなああああああああああああああああっっっ!!!!!」


カンナが怒りの形相で飛び上がり、サイクロプスの頭上に巨大金槌をぶつけた。


ドドォォン!!


サイクロプスの顔面が陥没し、その巨体が地面に倒れ込む。大地が震え、灰の平原が再び黒煙に包まれた。


一方、サイクロプスを駒のように使っていた【ドラゴンハンター】は、影の中へと後退する。


「……あの小娘、予想外だな。退くぞ……」


ドラゴンハンターはサイクロプスの死体の上に黒い封印陣を残し、霧と共に姿を消した。


「ふんっ。こんな雑魚、地底じゃ毎日相手してんのよ。地上の勇者ってこの程度なの?」


金槌を肩に乗せたカンナは、アルベルトに睨みを利かせる。


「お前……ドワーフ族か?」


「そうよ! 私はドワーフ王家第三王女、カンナ・アイゼンベルグ・ルーベン・ヘルツ。名乗りは一度しか言わないわよ!」


「名前長いな……」

とリスクが小声でつぶやくが、カンナにはしっかり聞かれていた。


「なんか言った? あんた、潰されたい?」


「……い、いえ、なんでもないです……」


 カンナはため息をつき、アルベルトに近づいて言う。


「……で、あんたたち。敵なの、味方なの、どっち?」


「……どういう意味だ?」


「地底竜ティアマット。あれを蘇らせたの、あんたたちの血でしょ?」


その名を聞いた瞬間、アルベルトの表情が凍りついた。


ティアマット。それは今、地底世界で暴れ狂っている“災厄”そのもの。


その復活に関わるのが、かつて血の神殿で倒したはずの男、闇の司祭カザール。


カンナの瞳は、敵をにらむように鋭かった。


「私はドワーフの民を救うために動いてるの。あんたたちが敵なら、いくら地上の勇者だろうが、許さない。いい?」


その言葉に、アルベルトはゆっくりと剣を収め、答えた。


「……ならば、一緒に戦おう。敵は同じだ。」


「ふーん。なら……見せてもらうわよ、あんたたちの“本気”ってやつ!」


こうして、ドワーフ姫のカンナが正式にアルベルトたちに合流。


地底竜ティアマットとの激闘、そして闇の司祭カザール、双剣の勇者の兄リンゼル、魅惑の黒魔術師マーリンとの運命的な戦いが、新大陸ザルツブルクで始まろうとしていた。


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