第10話 新たな大陸へと
リヴァイアサンの死によって、海底神殿の崩壊は免れた。
潮の流れは穏やかに変わり、長く人々を縛ってきた恐怖の重石が、ついに海の底に沈んだ。
暗かった水平線の彼方に、夜明けの光が差し込む。
そして
リヴァイアサンを倒したことにより
一気にレベルが3も上がった。
勇者アルベルトの体にじんわりとした温もりが広がる。
《勇者アルベルトのレベルが上がった!》
《体力が90上がった!》
《力が60上がった!》
《防御が64上がった!》
《素早さが48上がった!》
《賢さが50上がった!》
《魔力が42上がった!》
《運が33上がった!》
《新しい魔法「キズキ」を覚えた!》
「……シスターマリア、今日のまつげ、1本だけカールの角度が違うよ」
「ひっキモ……!? さっそくその魔法、使ったわね!?」
勇者アルベルトが女性が少し変化したことをすぐに指摘できる魔法を覚えた。
シスターマリアの周囲にも優しい光が舞う。
《シスターマリアのレベルが上がった!》
《体力が85上がった!》
《魔力が58上がった!》
《素早さが32上がった!》
《賢さが55上がった!》
リスクの体にじんわりとした温もりが広がる。
《リスクのレベルが上がった!》
《運が40上がった!》
《賢さが58上がった!》
《新しいスキル「取引先管理術」を覚えた!》
シスターマリア、もう詳細をみなくていいです。商人のスキルです。
名前で大体わかりました。
海を揺らす怪物が消えたあと、海底神殿にぽつんと残された重厚な宝箱。
それを開くと、中には――
《海竜の盾》
水属性の攻撃を遮断できる、竜の鱗で編まれた伝説の盾。
「おいリスク、それ……装備できるのか?」
「う、うん……でも、なんで? 俺、村人なのに……」
勇者アルベルトは苦笑しながら背中を叩いた。
「いいんじゃないか。少しでも強い盾に変えたほうが生き延びれる。」
その日の午後。
海底神殿前で人魚女王ミーナと従者アレイスと別れた。
「またお会いできる日を楽しみにしてます。」
俺たちは船に乗って、新たなる大陸・魔法国家ザルツブルクへと向かう。
港には、チビッコ海賊団と共に、グレイス・オマリーとバルドルの姿があった。
「……ここでお別れか」
勇者アルベルトが静かに言う。
「寂しくなるわね。」
シスターマリアがポツリと呟く。
グレイスはふっと笑って、照れくさそうに腰の爆薬袋を揺らした。
「いい戦いだったね。あたし、こんなに燃えたの久しぶりだったよ」
「グレイス……お前の“スペシャル・ハード・ラブカクテル”、あれはマジで伝説になるぞ」
「村人!またクイズバトルしようぜ」
バルドルがゴツい腕で俺の肩を抱いた。
子どもたちチビッコ海賊団のひとりが、涙をこらえて叫んだ。
「お兄ちゃんたち! ぜったい、ぜったい、また会おうね!」
「おう、もちろんだ。また冒険の話、聞かせてくれよな!」
グレイスが手を振る。
「じゃあね! ザルツブルクでも、バカやって元気に生きな!」
海賊船が出航し、港から遠ざかっていく。
空はまぶしく晴れわたり、海面が朝日にキラキラと光っていた。
「さあ、行こうぜ」
アルベルトが前を向く。
「新たな大陸、新たな魔法、そして新たな物語が待ってる」
俺たちは頷き新大陸のザルツブルク。
それは、魔法と謎と、未知なる冒険の国。
海の彼方のその大地に、俺たちは今、足を踏み入れようとしていた。
【第六部・完】




