第9話 迷いの森
毒牙の美魔女セリーネについての町で情報を集めると、恐ろしい事実が判明した。
「セリーネは毒薬と幻術を駆使する狡猾な魔女。森の奥深くに住み、迷い込んだ者を惑わす罠を仕掛けるらしい。迷いの森と呼ばれ、森に入ったものは出てこないそうだ。」
俺は地図と情報を整理しながらそう呟いた。
「しかも、美に異常な執着がある。若くてきれいな女性の生き血を吸うのが生きがいだとか……。」
「うわぁ……やばい奴じゃねぇか……。」
グリードが渋い顔をする。
「おいおい、そいつを倒せば魔王軍に打撃を与えられるな。」
勇者アルベルトが自信たっぷりに剣を握りしめる。
俺たちは迷いの森へと足を踏み入れた。しかし、入った瞬間から空気が変わった。
「……霧が濃い。」
シスターマリアが周囲を見渡すが、視界はどんどん悪くなっていく。
「くっ、やっぱり罠だな。」
アルベルトが剣を抜く。
「おい、足元気をつけろよ。こういう場所は落とし穴が……」
グリードが忠告した瞬間、俺の足元の地面が崩れた!
「わああっ!」
「リスクさーん!」シスターマリアが叫ぶ。
ガッシ!
だが、寸前のところでグリードの巨大な手が俺の腕を掴んだ。
「チッ、油断するなって言っただろうが。」
「あ、ありがとう……。」
落とし穴の下を見ると、無数の槍が突き出していた。落ちていたら確実に即死だった。
「この先も罠だらけだ。俺が先頭に立つ。」
グリードは盗賊団の頭領なだけあり、罠の解除に長けていた。巧みにワイヤーを切断し、落とし穴のトラップを解除していく。
「おい、右から蜂の大群が来るぞ!」
「マジかよ!?こんなの無理だって!」
「落ち着け、ここは俺に任せろ。」
グリードが手際よく煙玉を取り出し、蜂の群れを煙で追い払った。
「はぁ、おっさんが仲間で助かったぜ……。」
アルベルトが息をつく。
しばらく進むと、前方に巨大な洋館が見えてきた。
「間違いねぇ……あれがセリーネの住処だ。」
俺はじっくりと情報を再確認し、ある計画を実行に移す。
「アルベルト、女装してくれ。」
「……は?」
「セリーネは若くて美しい女の生き血を求めてる。お前ならイケる。」
「ふざけるな!俺は勇者だぞ!なんでそんな辱めを……。」
「おいおい、俺たちがここまで来れたのは俺の知恵とグリードの罠解除のおかげだろ?お前も協力しろよ。」
「ぐぬぬ……。」
「これも戦略のうちです、勇者様。」
シスターマリアが微笑む。
「そうだな。勇者ならば、どんな試練にも耐えなければならないよな?」
グリードがケタケタ笑った。
「くそっ、もうやるしかねぇ……。」
勇者アルベルトは俺が町で用意した女性ドレスとカツラを着ける。
シスターマリアが勇者アルベルトに化粧をする。
こうして、勇者アルベルトの女装大作戦が幕を開けるのだった。