第9話 「山頂へ」リヴァイア山、最終決戦!
リヴァイア山それは“山”の名を冠しながらも、生きている。
上下左右にのたうち揺れ、海を裂くその姿は、まさに動く“災厄”。
俺は毒針をピトン代わりに、硬質な鱗の隙間へとねじ込んでいく。
縄を括りつけて、何度も揺れに耐える
そして一度でも気を抜けば、落下して即死である。
特に首のあたりは地獄だった。リヴァイアサンの咆哮とともに体が波打ち、身体が空へと放り出されそうになる。
だが俺は――諦めなかった。
「……うおおおおおッッ!!」
そしてついに、俺は登頂を果たす。
リヴァイア山の頂に、俺は立ったのだ。
「やった……やったぞ……やればできる!」
その瞬間だった。
■《タイダル・クライシス》発動3ターン目■
それは、リヴァイアサンの奥義にして必殺。
海そのものを終末へと塗り替える、終わりの波動。
――ゴゴゴゴゴ……
リヴァイアサンの背後の空間が割れた。
「……な、なんだ、あれは……!」
勇者アルベルトが見上げる先。
そこには、天と地を覆い尽くす巨大な津波が、形を成していた。
「全バフ解除……行動遅延……地形崩壊まで……!? 終わる……!」
“終焉の津波”が勇者パーティに迫る。
あと数秒ですべてが終わる。
だが、俺は目の前の“頂”を見た。
リヴァイアサンの巨大な眼球。
そこに骨はない。柔らかく、そして――無防備。
俺は叫んだ。
「ここしかねぇ!!」
グサッ!!
毒針を、目の中央へ突き刺した――!
怒りの悲鳴をあげるリヴァイアサン。激しく身をよじり、俺の体が宙を舞う。
だが俺は、ロープにすがりついた。死にたくない。ただ、勝ちたい。
道具袋を開く、俺はイカズチの杖を取り出す。
「天よ、怒れ!雷よ、我が剣となりて敵を討て――《サンダーブレイク》!!!」
ズガァァァァァァン!!!
雷鳴が落ちた。毒針を伝って、目の奥、脳へ直撃!!
肉の焼ける音と、振動。リヴァイアサンの身体がビクンと痙攣する。
「グオオオオオオアアアアアアア――ッ!!!!」
脳を焼かれる苦痛に、リヴァイアサンが絶叫した。
脳みそへの直接攻撃!これにはどんな自動の防御も効かない。
俺は、さらに撃つ。さらに、さらに、雷を落とす!
「食らえ! これが人間の知恵だッ!!」
そして
天井からロープにぶら下がっていたのは、グレイス・オマリー。
その手には爆薬、笑顔、そして覚悟。
「母ちゃんがでけぇ魚を倒すよ!」
彼女は、すべての言葉を振り払うように叫んだ。
「いっけぇええええええええ!!!スペシャル・ハード・ラブカクテル!!!!!」
爆薬を抱えて、特攻。
ドオオオオオオオオン!!!!!!!!
大爆発。
炎と水しぶきが舞い、世界が赤と青に染まった。
その中心で、グレイスは湖の中で笑っていた。
「……燃える、いい女だ……!」
仲間のひとり、バルドルが叫んだ。
「グオオオオオオアアアアアアア――ッ!!!!」
そしてリヴァイアサンは、大きな咆哮をして崩れ落ちた。
巨大な海の神が、ついに沈黙したのだ。
地鳴りが止み、潮の流れが凪いだ。
俺たちは海竜王リヴァイアサンに、勝利した。




