第7話 うっかりリスク
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名前 海竜王リヴァイアサン
レベル:99
体力:9999(※絶えず回復している)
攻撃:4800
防御:7700
素早さ: 999
魔力:6000
賢さ:999
運:60
この世界でかつて世界を三度沈めたとされる、伝説級モンスター。海底神殿の最奥に封印されていたが、魔力の乱れと人類の欲によって復活。知性と本能が融合した戦闘スタイルを持ち、力任せの攻撃ではなく“構造として勝つ”戦いを展開する。戦いの途中で周囲の地形・水流・光量なども支配下に置く環境制御型の支配者。
固有スキル 海の王( 水属性無効)絶対圧領域(範囲内の物理攻撃を減衰させる/即死耐性を貫通する圧力ダメージを付与) 神域の鱗(一定ダメージ以下の攻撃を完全無効化)竜鱗反射(巨大な鱗が硬質化し、あらゆる魔法を反射。通常攻撃もほとんど効かない自動防御)
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海竜王リヴァイアサンが、海底湖の中心で唸り声をあげた。空間が歪むような重低音が洞窟全体を揺らし、神殿の天井から幾筋もの海水が崩れ落ちる。
その時
「リスクさん!?それ毒キノコですよ。」
俺は、近くに生えていた“腐海なダケ”をもぐもぐと口に入れた。
「…………あああああああああああああああああああッッ!!」
リスクこと俺は、その場に崩れ落ち、のたうち回る。
「な、なんだこの不快感……!上司に説教されたあと、嫌いな奴に“お疲れ様で〜す”って笑われる感じだ……!」
【リスクの攻撃力が-5になりました】
「……おいおい、なんで戦闘前にそんなもの食べてんだよ!?」
仲間たちの悲鳴もどこか遠く、俺は自分の中の“何か”が沈んでいくのを感じていた。ゼロの能力も発動できない。今の俺はただの村人以下。
「リスクさん、おじいちゃんのまんまですよ。」
まった。村長モードのままだ!
シスターマリアがあわてて俺に魔法をかける。
「聖なる光がリスクを記すステータス!」
空中に俺の現在のステータスが浮かび上がった。
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名前:リスク(村長)
レベル:45
体力:24
攻撃:5-5(腐海なダケの効果)
防御:2
素早さ:1
魔力:1
賢さ:530
運:555
※この世界で、最も弱いスライムに負けた男。
称号:
・必殺の仕事人 リスク
・ビックリさせる天才
・しびれされる者
固有スキル:
・ゼロの能力者(現在無効)
・村を作る(現在使用不可)
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「村長をキャンセル!」
フサフサと髪の毛が元に戻り、俺はいつもの“村人”モードになった。
だが、不快感はまだ抜けない。-5のステータスだとゼロの能力はこの状態では使えない。
俺はただ、勇者パーティの背後からその様子を見守るだけだった。
前線では、リヴァイアサンの猛攻が始まっていた。
「《深海咆哮》だ!伏せろッ!」
雷と高圧水流が混ざったブレスが炸裂し、勇者アルベルトたちを吹き飛ばす。地面に雷が走り、岩盤が砕け、神殿の天井がひび割れる。
「このままじゃ、全滅する……!」
どんな攻撃も、リヴァイアサンの《竜鱗反射》により打ち消されていく。
その間も俺は、後方で立ち尽くしながら、冷静に状況を観察していた。
(……こいつは、ただの暴力じゃない。全部“計算されてる”)
仲間たちが叫び、血を流しながら倒れていく姿を見ても、俺は焦らない。
まだ、その時じゃない。
逆転の鍵は、“ゼロの法則”まで俺はなんとか生き残らなければならない。
俺はただの村人のなので岩陰に隠れた。
「タイダル・クライシス……チャージに入った!」
ミーナの顔が蒼白になる。
海竜王リヴァイアサンの全身が淡く光り始め、周囲の海水が異様な熱と重圧を帯びて揺れる。
「まずい……3ターン後に来るぞ!」
その間も、リヴァイアサンの攻撃は止まらなかった。
「《深海咆哮》ッ!」
海底神殿全体が震えた。
雷と高圧の水流が一体となり、パーティーを飲み込む。
「ぐあああああああああッ!」
バルドルの大盾が砕け、シスターマリアの祈りが中断される。
勇者パーティー全員のHPが大幅に削られ、感電で動きが鈍くなる。
なお、俺の攻撃力は依然として「-5」である。
不快さも継続中だ。
だが、反撃の兆しはようやく、見えてきた。俺は海底湖の周りにある岩陰を女海賊グレイスオマリーと一緒に少しずつ移動を開始した。
《タイダル・クライシス》【奥義/必殺】
全体攻撃/水+無属性(複数ヒット)
【効果】致命ダメージ+全バフ解除+行動遅延+地形崩壊
※3ターンチャージ後に発動。海底神殿の地形すら変える終末の津波。