第2話 突然の別れと新しい仲間
「わたくしの親が、突然の危篤なんですの……」
そう言い残して、黒魔術師マーリンはパーティーを離れることになった。
(……うそやろ。親、絶対生きてるやつ( ^ω^)/)
俺、リスクは即座に心の中でツッコんだ。
勇者アルベルトも
「んー、あれは明らかに嘘っぽいなぁ」と眉をひそめた。
(きっと俺が“ゼロの能力者”だって上司か、なにかに報告するためだな、魔族の手先め……!)
そう思っていたのは俺だけではなかった。だが一人だけ、純粋に信じる者がいた。
「マーリンさん……お気をつけて。きっと、また会えると信じています」
シスターマリアは真っ直ぐな瞳で微笑み、手を合わせて祈っていた。
なんて心がきれいなんだ。いや、むしろ騙されてますよ。
マーリンは薄く笑って、ふとこちらを見た。
その目が紅く光っていた。◆ ◆ ビカー
涙を浮かべながらも、不気味な笑みで。
(うわ、絶対敵フラグ……今こいつが魔族ですよ!って叫びたい!)
だが、現在の勇者アルベルトのレベルは47。今闘っても微妙に勝てなさそうなので全員が沈黙を貫いた。
「皆様……今まで本当にありがとうございました」
マーリンが去り際にそう言うと、シスターマリアは手を握った。
「必ず、またどこかでお会いしましょうね」
「……ええ。次に会う時は……ふふ、どんな立場かしらね?」
マーリンの言葉に一同、薄ら寒いものを感じながら見送った。
その後すぐ、入れ替わりに現れた新たな仲間。
彼女の名はミーナ。人魚族の新女王。職業は歌姫。
「わたし、リヴァイアサンを倒すまでの期間限定でお供いたします。どうぞ、よろしくお願い致します」
とても礼儀正しく、美しく、声も透き通るようだった。
「なんと……女王でありながら、旅に同行とは……!」
シスターマリアが感動したように手を合わせた。
ミーナは微笑んだ。
「わたくしの歌には、眠りを誘い、魔を払う力がありますの。お役に立てると嬉しいです」
「へぇ~。歌って戦うんだ? なんだかアイドルみたいで素敵ですね!」
勇者アルベルトがテンション高めで目をキラキラさせる。
が――その目つきが明らかにスケベだった。
「アルベルト様、目線が下品です」
シスターマリアが氷のような声でにらみつける。
「いやいや、違うって! あくまで仲間として、尊敬の念をですね……その……」
「勇者がそんなことでいいんですか? 神の罰、与えますよ」
シスターマリアが十字架を取り出した。うっすら光ってる。
(マジで一発でバチ当たるやつだ、これ……)
そしてその横には、ミーナの護衛でもある恋人・アレイスが。
黙って腕を組み、じっとアルベルトを見ている。口元は笑っているが目はまったく笑っていない。
「……そ、その……お二人、とてもお似合いですね! はは……」
アルベルトは目を泳がせていた。
こうして、黒魔術師のマーリンとの別れと、歌姫ミーナとの出会い。
旅は、思わぬ形で続いていくのだった。




