第8話 飲み会
勇者アルベルトは不満げな顔で俺を見た。
「なあリスク……なんで俺がケモクジャラのおっさん大ネズミとパーティーを組まなきゃいけないんだ?」
「……まあ、相手も事情があるんだよ。」
俺は苦笑いを浮かべた。
「俺はな、美女とか幼女とかとパーティーを組みたかったんだよ! 理想はハーレムパーティーだ! なのに、なんでおっさんモンスターとパーティー組まなきゃならないんだ……!」
アルベルトは大げさに天を仰いで嘆く。まるで人生最大の不幸を嘆くかのようだ。
「まあまあ、グリードは毒牙の美魔女セリーネを倒すまでの雇用契約だからさ。ずっと一緒にいるわけじゃない。」
「だとしても、納得いかねぇ!」
その時、グリードがニヤニヤしながら口を挟んできた。
「おいおい勇者さんよ、勇者ってのは聖人君子だと思ってたが、とんだスケベ野郎だったんだな。」
「うるせぇ! 男の夢をバカにすんな!」
「いやいや、夢がどうこう以前に、俺を雇うって決めたのはお前らの方だぜ?」
「ぐっ……!」
アルベルトが言い返せずに黙り込んだ。なんかパーティーの雰囲気が最悪だ。
そんなこんなで、俺たちは次の町に到着した。
俺は宿屋を手配し、不足した道具類を補充した。
そして、二人が不安になり勇者とグリードの様子を見に行ったところ酒場の中から、やたらと陽気な笑い声が聞こえてきた。
「ははははは! いや、おっさん面白れぇじゃん! 気に入ったぜ!」
「おー勇者さんよ、俺もお前を誤解してたぜぇ! お前、意外と話の分かるヤツじゃねぇか!」
酒臭い二人は肩を組んで上機嫌に酔っ払っていた。
「……え、さっきまであんなに険悪だったよな?」
俺は思わず自分の耳を疑った。
後ろからシスターマリアが冷ややかな目で二人を見つめる。
「……なんですか、あれは。リスクさんの苦労をなんだと思ってるんですかね。」
腕を組み、頬を膨らませている。……なんだかすごく可愛い。
「まあまあ、雨降って地固まるっていうし、結果オーライじゃない?」
「ぜんぜん納得できません!」
シスターマリアのぷくっと膨れた頬が可愛すぎる。俺は密かに癒されていた。
その後、宿屋に戻ったが、そこはとても小ぎれいで料理も最高に美味しかった。
「はぁ……最高……。」
俺は久々の贅沢に浸る。
しかし、のんびりしている暇はない。俺は次の敵、毒牙の美魔女セリーネの情報を集めなくてはならない。
さて、どうやってこの魔女を攻略するかを俺はベットの上で天井のシミを数えていた。