第7話 真実の女王セレナ登場
ヴァレグリスが静かに咆哮を止める。
その背後―海底火山のマグマの奥に、青白く輝く水のゲートが開いた。
そこから、透き通るような白いドレスをまとった美しい女性が現れる。
その金色の瞳は冷たく、感情を感じさせなかった。
ミーナが震える指でその姿を指差す。
「……セレナ……女王……」
アレイスが一歩前に出る。
「なぜだ!なぜミーナから歌を奪った!ヴァレグリスを暴走させて、俺たちを殺そうとしたんだ!?」
セレナは静かに笑う。
「歌?ああ……あの小さな声ね。確かに美しかった。だから摘んだの。ただ、それだけ」
「え……?」
セレナは水のように滑らかに言葉を重ねた。
「ねえ……あなたたち人間、毎日同じことばかりでつまらないと思わない?
私は、ただ少し、退屈だっただけ。
刺激が欲しかったの。どうせ、あなたたちは“すぐ死ぬちっぽけな存在”でしょう?」
一同、凍りつく。
「……なんてことを……!」
とシスターマリアが震える声で言う。
セレナの瞳が一瞬、深い深海のように青黒く揺れた。
「私の退屈を、癒すだけの価値もない。けれど……少しは楽しませてくれるのなら、命くらい賭けてみなさい?」
「セレナ!お前の思い通りなんかにはさせない!」
アレイスとミーナが女王を睨みつける。
「……あなたたち、本当にしつこいのね」
静寂の海底宮殿に、女王セレナの冷たい声が響いた。
「私はね、退屈だったのよ。
毎日同じ宮殿、同じ挨拶、同じ祈り。
でもね、人間は面白い。すぐ死ぬし、すぐ泣く。最高の玩具だわ」
その瞳には、憐れみでも怒りでもない、
ただただ退屈からくる“興味”しかなかった。
「お前…ッ、本当に女王かよ…!」
アルベルトが剣を抜き、怒りを込めて叫ぶ。
セレナは優雅に笑った。
「ええ。私こそが、この海の支配者。“水の鍵”の継承者よ」
「でも安心して。今からあなたたち、全員“泡”になるから」
バシャアアアッ――
彼女の体から水の柱が天井に届くほど噴き上がり、あたり一帯のマグマが一瞬で冷却される。
その蒸気の中から、女神のような姿でセレナが浮かび上がった。
背中には、水と光でできた“羽”が広がっている。
「私は、海底王国の真なる統治者。水神の加護を受けし者、セレナ・ヴェル=ノア
お前たちの運命、そのすべてを水と凍りで凍らせてあげる」
人魚の女王 セレナ=ヴェル=ノアが出現をした。