第2話 捜査開始
雨上がりの朝、カズヤとアイゼンハワードはサーカスランドリーに到着した。
現場はまだ封鎖され、警察のテープが風に揺れている。二人は手袋をつけ、慎重に足を踏み入れた。
「まずは現場の確認だ。金銭の流れ、両替機、監視カメラの映像…逃せないポイントは多い。」
カズヤの声には、冷静だが鋭い緊張感が漂っていた。
両替機の周囲をアイゼンが観察する。
「異常な傷や改造は見当たらない。だが、この機械の内部ログが重要だな。」
二人は機械を分解し、記録装置のデータを確認する。収支記録の不自然な部分や、夜間に金額が増減した痕跡が残されていた。
社内・関係者への聞き込み
カズヤとアイゼンは、佐藤浩一の会社「サーカス企画」の関係者から話を聞き始めた。
鈴木 一郎(営業担当、29歳)
「…その夜、社内での動きは特に変わったことはありませんでした。ただ、最近、社外の人物が妙に営業に来ていたのは気になっていました。」
カズヤはメモを取りながら、鈴木の目つきや言葉の間を観察した。社交的だが、どこか計算高い影がある。
浜田 梨沙(経理部長、34歳)
「帳簿上の異常は一度確認しましたが、あまり人に言うと混乱を招くと思い、私だけで調べていました。」
細かく帳簿をめくる浜田の手元には、数字への執着と秘密を抱えた雰囲気が漂う。
高橋 健介(技術責任者、42歳)
「機械のメンテナンス記録には特に問題はありません。ただ、夜間の監視カメラに映らない死角があります。」
その言葉に、アイゼンの目が鋭く光った。「なるほど、死角を把握しているのは彼だけか…」
佐藤 春菜(従業員、26歳)
「私は…その夜、ちょうど両替機を整理していました。変なことは何も…」
しかし、春菜の手はわずかに震えており、何かを隠している気配が漂う。
黒崎 剛(夜間警備員、38歳)
「私はただ巡回していただけです。異常は見ていません。」
その落ち着いた表情の奥に、鋭い観察眼と秘密めいた影が見え隠れする。
藤原 美咲(取引先営業、31歳)
「その時間、私は契約書類を届けに来ただけです。怪しいことはありません。」
だが、目線が時折両替機に滑り、何かを気にしている様子があった。
現場検証が進む中、カズヤは両替機の脇で奇妙な紙切れを見つけた。
そこには赤い文字で、はっきりとこう書かれていた。
「悪魔のコイン」
「…これは何だ?」
アイゼンは紙を慎重に手に取り、眉をひそめた。
「単なる脅迫か、それとも犯行の動機を示す暗号か…」
二人は顔を見合わせた。
これまでの聞き込みで浮かび上がった怪しい人物たち。そして、この謎めいた言葉。「悪魔のコイン」は事件の核心に迫る重要な手がかりになる予感がした。
雨で濡れた地面に、赤いインクのメモがかすかに映える。
カズヤは静かに呟く。
「…これはただの窃盗じゃない。何かもっと大きな計画が動いている。」
アイゼンも頷いた。
「我々は、まだ序章に過ぎない。真実を見極めるのは、これからだ。」
こうして、“悪魔のコイン”事件の捜査は本格的に動き始めた。
小さな手がかり、怪しい人物、そして謎の言葉。すべてが、次の悲劇への布石となるのだった。
佐藤 浩一(45歳: サーカス企画社長) 強盗に襲われ意識不明となる。
野心的でカリスマ性があり、ビジネスセンスに優れる。
鈴木 一郎(29歳、営業担当)
社交的で話し好きだが、時に計算高い一面も。集金前に夫の動きに注意を払っていた。
浜田 梨沙(34歳、経理部長)
冷静で正確な判断力を持つが、最近の売上異常を誰にも相談せず独自に調査していた。
高橋 健介(42歳、技術部門責任者)
真面目で技術に情熱。両替機の異常動作を見つけている。
佐藤 春菜(26歳、従業員)
明るく親しみやすいが、内に秘めた悲しみを持つ。
緒方 洋一(29歳、ライバル店経営者)
社交的で話し好きだが、商売敵。
黒崎 剛(38歳、夜間警備員)
落ち着いた表情だが、目つきは鋭く常に周囲を観察している。
藤原 美咲(31歳、取引先営業)
美しい外見で社交的だが、金に対する執着が強い。