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プロローグ 襲撃

夜の帳が下り、街の喧騒が静まり返る頃。

品川の裏通りにひっそりと建つコインランドリー「サーカスランドリー」の灯りだけが、ぽつりと闇を照らしていた。


経営者の佐藤浩一は、店じまいを終え、重い集金袋を片手に駐車場へと歩いていた。

その袋には百円硬貨がぎっしり詰まっており、金属のこすれる音が夜気に響いていた。


普段なら「いつものこと」と軽く受け流せるはずの光景だった。

しかし今夜は違った。背中を撫でるような冷気と、不意に胸をよぎる直感――“誰かに見られている”。


彼が車のドアノブに手をかけた瞬間、背後から低く、異様な声が落ちてきた。


「……100円玉をよこせ」


振り返った佐藤の視界に飛び込んできたのは、黒いローブに身を包んだ怪しい影。

顔は不気味な悪魔の覆面に隠され、覗く眼孔からは赤い光がにじみ出ていた。

それはまるで、地獄から迷い出たもののようだった。


「な、何者だ……!」


恐怖に震える声を最後に、佐藤は襲撃を受けた。

集金袋を奪われ、抵抗も虚しく地面に叩きつけられる。

視界が揺れ、血の味が口に広がる中、覆面の男は不気味な声を残した。


「……これで終わりじゃない。まだまだ悲劇は続くぞ」


闇に溶けるように消える影。

佐藤は倒れたまま意識を失い、ただ硬貨の散らばる音だけが夜に残った。



■■■


翌朝、事件はニュース速報として全国に報じられる。


「この時間、緊急ニュースをお伝えします。本日夜、品川区にあるコインランドリー「サーカスランドリー」の経営者が何者かに襲われました。現在、被害者は意識不明の重体となっており、警察は事件の詳細を調査中です。現場からは、ジャーナリストの渡辺真理子さんが中継でお伝えします。渡辺さん、現場の様子はいかがですか?」


画面が切り替わり、警察車両のライトが点滅する現場の映像が映し出される。



「はい、私は今、事件が発生したコインランドリー「サーカスランドリー」の前にいます。ご覧の通り、警察が現場を封鎖し、捜査を進めています。被害者は、集金日の帰り道で襲撃されたとのことですが、目撃者の話によると、襲撃者の姿は見えず、突然倒れたということです。」



【ニュースキャスター】

「それは驚きですね。現場周辺の住民の反応はどうですか?」



「住民の方々は、このような事件が自分たちの身近で起こったことに非常に驚き、そして恐れています。被害者の方は地域で親しまれていた方で、なぜこんなことが起こったのか、誰もが信じられない様子です。」



【ニュースキャスター】

「警察は何か声明を…」


突然、画面に警察のプレスリリースが映し出される。


「お待ちください、警察からのプレスリリースが入りました。犯人についての具体的な情報はまだありませんが、警察は市民の皆さんに注意を呼びかけています。何か情報があれば、すぐに警察に連絡するようにとのことです。」



「渡辺さん、ありがとうございます。引き続き、事件の進展に注目していきます。」


画面がスタジオに戻り、ニュースキャスターが深刻な表情でカメラを見つめる。


サーカスランドリーの経営者である佐藤浩一は、集金日の夜、何者かに襲われる。彼は重傷を負い、病院に運ばれるが、意識不明のままである。事件のニュースはすぐにメディアに拡散し、街は恐怖に包まれる。





そのころ。

病院に駆け付けた妻は、藁にもすがる思いで一通の依頼状を書いていた。


宛先、私立探偵、カズヤ。

そして、彼と共に数々の怪事件を解決してきた相棒、魔族のおっさん・アイゼンハワード。


こうして、後に「悪魔のコイン事件」と呼ばれる奇怪な事件が幕を開けるのだった。


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