第9話 猫の群れとレアアース
沖の原島の風は、夜明けとともに冷たく、岩場を打つ波音は不穏なリズムを刻んでいた。
カズヤとアイゼンハワードは、勝トシエの残した手がかりを元に、白猫の導きに従い島の北側の険しい岩場を進んでいた。
「この先か…」
アイゼンハワードは岩陰に目を凝らす。霧が立ち込める中、白猫の影がすっと岩の隙間をすり抜けた。
「見えた、あそこだ!」
カズヤは息を潜めて猫を追う。岩を越え、狭い崖道を抜けると、二人の目の前に小さな洞窟が現れた。
洞窟の奥には、夜光を帯びた石が散在している。まさにレアアース三神建設が目をつけた秘密の場所だった。
だが、その場に立つ藤原健太の姿があった。
「…藤原さん、こんなところで何を?」
アイゼンハワードは静かに声をかける。
藤原は振り返り、微笑んだが、その目には冷たく利己的な光が宿っていた。
「フフフ、この島の未来は俺が握る。島民も三神建設も、俺の利権には逆らえない。」
手に持った図面には、レアアース採掘の詳細な計画が描かれていた。
その時、洞窟の入り口に黒猫、白猫、そして斑猫が姿を現した。藤原の動きを見つめ、低く唸る。さらに岩場のあちこちから、島中の猫たちが集まり、まるで人間を警告するかのように徘徊を始めた。
「…これは…何かのサインか?」
カズヤがつぶやく。橋本の死、三神雄二の死――すべてが猫たちの行動と関連しているように思えた。
藤原は猫の群れに気づき、焦りの色を見せる。
「な、何だ…この大量の猫は!」
だが、猫たちは決して攻撃するわけではない。ただ、藤原を包囲するかのように静かに立ちはだかり、その視線は鋭く、警告を発していた。
「カズヤ、ここで何か仕掛けがあるかもしれない。慎重に行動しよう。」
アイゼンハワードは手元のライトを灯し、洞窟の奥を調べ始める。
洞窟の中、ひときわ大きな岩の下に小さな金属の箱が隠されていた。藤原がこの場所を独占しようとしていた証拠。密かに利権を手中に収めるための計画書や契約書が収められていたのだ。
「なるほど、これで藤原の目的がわかった。島民と三神建設の反対派を脅して、利権を独占しようとしていたんだ。」
カズヤは箱を慎重に取り上げ、アイゼンハワードに手渡す。
その瞬間、洞窟内の風が強く吹き抜け、猫たちの鳴き声が一斉に響いた。
まるで「これ以上手を出すな」とでも言うかのように、猫たちは洞窟の出口を封鎖するかのように立ちはだかる。
藤原は狼狽し、何度も後ずさりする。だが、カズヤとアイゼンハワードは冷静に状況を見極め、藤原の身動きを封じる準備を整えた。
洞窟の闇と猫たちの群れ、その緊張感の中で、事件の真相は少しずつ形を現し始めていた。黒猫の呪い、白猫の手がかり、そして人間の欲。すべてが交錯し、次なる衝撃が迫りつつあった。
三神建設関係者
三神雄二:45歳、部長、自己中心的で野心的(死亡)
橋本史郎:40歳、プロジェクトマネージャー、効率重視、(死亡)
加賀美良子:30歳、広報担当、社交的で説得力あり
島の住民
我聞龍二:50歳、漁師、神秘的、黒猫伝説を信じる
井上真理子:28歳、医者、白猫と黒猫伝説を研究
木村梓:32歳、民宿経営者、温かい性格
勝トシエ:63歳、占い師、黒猫伝説に詳しい(死亡)
神林一郎:55歳、神主、伝統と文化を重んじる
安藤春:31歳、新聞記者、好奇心旺盛
佐々木大輝:36歳、教師、温厚だが時に厳しい
森田健一:29歳、ダイビングショップ経営者、冒険好き
沢田淳:46歳、警備員、真面目で責任感強い
藤原健太:37歳、不動産投資家、開発の利権狙い




