第3話 魚人と人魚族の村 ~恋と鍋とメデューサ姉さん~
「ようこそ、アトランティスへ」
俺たちは海底に広がる中立の村、アトランティスに到着した。
そこは海底に築かれた、美しいドーム状の村だった。魚人と人魚族が共存する、中立の地。
敵ではなく、味方でもない。だが、人間と友好的な数少ない村の一つだ。
魚人族と人魚族が平和に共存するこの村は、人間にも寛容で、まるで別世界のような穏やかさが漂っていた。
「この村……懐かしいわ。あたし、小さい頃ここで育ったんですの。」
そう呟いたのは、我らが黒魔術師・マーリン。
宿に向かう途中、「ちょっと実家に顔出しきますわ」と寄った家
そこに現れたのは……
ドンッ!!(玄関を蹴破るように登場)
「あんた、まだ結婚してへんのかいな!!」
金の翼がひらめき、ヘビがうねる、迫力120%の姿で登場したのは
マーリンの姉、通称 メデューサ姉さん(本名:グラトニア=メデューサ=ル=カリュドーン)
(えっ……めっちゃメデューサやん。てか、ヘビの動きリアルすぎて直視できねぇ)
メデューサって魔族じゃねえ。俺は思ったが恐怖で口にはできない。
「姉さん!?なんで急にその話やねん!」
メデューサ姉(ズイッと顔を近づけ)
「そろそろ落ち着いてもええ歳やろ~? アンタ、人間年齢で言うたら……」
「やめぇぇぇぇぇえええっっ!!!」
「……で、そこの真面目そ~な勇者くんはどうなん?結婚、考えてんの?」
アルベルト(ぴしっと直立しながら)
「……えっ。いや、あの。今は旅の使命が……その……」
メデューサ姉(にやりと笑い)
「マーリン、ええ子やで? 料理は壊滅的やけど、魔法の腕はピカイチや! なんかあったら家ごと吹き飛ばせるで!」
(小声で)「それって、逆に怖……」
「なぁ、姉さん、ちょっと黙ってくれへん?」
その夜。
宿の食堂では、村の魚介の食材をふんだんに使ったお見合い鍋パーティーが勝手に開催された。
メデューサ姉(でっかい魚を豪快にぶち込んで)
「さぁさぁ、ふたりで取り分けたり~な!勇者くん、マーリンのこと、どや? 嫁に欲しい思たことあるやろ?」
マーリン(真っ赤)「あるわけないやろ!!」
アルベルト(めっちゃ見られてるので曖昧に笑う)
「……その、頼りにはしてます」
メデューサ姉(おたま片手に机ドン)
「おっしゃ決まり!!結納は来週や!」
「勝手に進めるなぁぁぁ!!」
メデューサ姉さんが実家で盛り上がってる中
俺とシスターマリアは物資補給と新しい武器防具を見に武器屋「ウォーターボーイズ」へやって来た。
魚人商人が店番している。
「いらっしゃい!水鏡の盾・鎧・具足のフルセットで、今ならおまけに真珠の耳かき付き!」
(商人スキル発動!)
「兄さん、ここの縁見て。ちょい欠けとるねん。それに、この素材、去年のやろ?新作は背ビレついてるはずやん?」
「ぬぬぬ……」
「せやから3割引。さらにサンダーソードも付けて。値引きしないなら、となりの店行くで?」
「……うぐっ!おそるべし関西人……いや、商人スキル恐るべし!しゃーない、特別価格や!」
「リスクさん、なんか……商談ってより漫才見てる気分です……」
勇者アルベルトは水鏡の鎧、 水鏡の盾、 水鏡の具足の水鏡のセットにより水属性の防御が20%アップした。
そして新武器のサンダーソードを装備した。サンダーソードって汎用性の武器なんだね。俺は特注の武器かと思った。
アトランティスの夜の宿で……
俺はふかふかのウォーターベッドに横たわっている。
「アトランティス最高かもしれん……」
夢に出てきたのは、やっぱりシスターマリアだった。
でも内容は、内緒や。だって……男には、言えない夢もあるんやで。
そして翌朝
「では、出発します」
アルベルトは、いつになく早起きだった。
荷物は既に背負っており、宿のドアの外で待機中。顔には微かな疲れの色。
「早くね? てか、朝ごはん食ってないだろ?」
「構わん。……早く、出よう。今すぐ」
マーリン(頭を抱えながら)
「あたしの婚期が強制的に始まって終わった気がする……」
メデューサ姉さんは目が真っ赤に光っている。
目を見てはいけない。もしも魔族のメデューサだったら石化してしまうからだ。確実に。
アルベルトに石化攻撃は水鏡の盾で反射できるだろう多分。
「ほな、あんたら式の日取り決まったら連絡してなぁ~!!子どもは3人やでぇ~!!」
「あの人、世界征服より厄介じゃない?」
「今んとこ、魔王より脅威かもしれん……」
こうして、勇者パーティーは逃げるようにアトランティスを後にした。
だが、メデューサ姉の“愛の魔の手”は、まだまだ彼らを追い詰めるのだった。