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【ランキング12位達成】 累計52万6千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:なき猫』

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第1話 沖の原島に到着、調査開始

沖の原島の港に到着したとき、空は曇りがちで、風が磯の香りを運んでいた。港には港町の人々と、あちこちに座った猫たちがちらほら見える。黒、白、斑、灰色……猫たちはまるで島の住人を見守るかのように、静かに港を歩き回っていた。


===========================


三神建設関係者

三神雄二:45歳、部長、自己中心的で野心的

橋本史郎:40歳、プロジェクトマネージャー、効率重視、(死亡)

加賀美良子:30歳、広報担当、社交的で説得力あり


島の住民

我聞龍二:50歳、漁師、神秘的、黒猫伝説を信じる

井上真理子:28歳、医者、白猫と黒猫伝説を研究

木村梓:32歳、民宿経営者、温かい性格

勝トシエ:63歳、占い師、黒猫伝説に詳しい

神林一郎:55歳、神主、伝統と文化を重んじる

安藤春:31歳、新聞記者、好奇心旺盛

佐々木大輝:36歳、教師、温厚だが時に厳しい

森田健一:29歳、ダイビングショップ経営者、冒険好き

沢田淳:46歳、警備員、真面目で責任感強い

藤原健太:37歳、不動産投資家、開発の利権狙い


========================


「ネコノ島……にゃんにゃん島、か。文字通りだな」

アイゼンハワードは赤い瞳を細め、ワインレッドのマントを翻しながらつぶやいた。


孫のカズヤは船の揺れに少しふらつきながら、目をこすった。

「猫、多すぎませんか……普通に歩いてても踏みそうです」


港の桟橋には、三神建設の広報担当・加賀美良子からの連絡を受けた島民たちが集まっていた。だが、彼らの視線は冷たく、警戒心に満ちている。開発への反発と恐怖が混ざった空気が、港全体を覆っていた。


「……見ろ、カズヤ。猫だらけの島だ。しかも、人間よりも数が多い」

アイゼンハワードは歩きながら、通りをうろつく猫たちを指で追った。


猫たちは彼に興味を示すかのように、低く唸ったり、ゆっくり目を細めたりしている。中には、毛並みが漆黒の猫がじっとアイゼンを見つめる。


「……あの黒猫、ちょっと怖いです」

カズヤが息をひそめる。


「怖がることはない。だが気をつけろ。この島には古い言い伝えがある」

アイゼンは低くつぶやいた。


「黒猫が三度同じ場所で鳴くと、人に死が訪れる。白猫を抱けば死を免れる……」


カズヤは背筋がぞくっとするのを感じた。前日、ニュースで聞いたばかりの橋本史郎の死が脳裏をよぎる。

「……魔族の目で見ても、あの死は……偶然じゃないんでしょうか」


アイゼンは肩をすくめる。

「偶然……いや、人為的な何かの可能性が高い。黒猫は、事件の象徴に過ぎない」


二人は港を抜け、島の中心部に向かう。路地にも猫はあふれ、木の枝や屋根の上からじっと二人を見つめている。カズヤは猫たちに道を遮られながらも、アイゼンハワードの背後にぴったりとついて歩いた。


民宿の経営者木村梓は二人を出迎え、島の状況を簡潔に説明した。

「黒猫の目撃情報は増えていて、橋本さんの死で島はパニック状態です。住民の間でも、伝承が現実になったと……皆、恐れています」


「なるほど……」

アイゼンは梓の言葉を聞きながら、細かく観察した。

猫の視線、住民の視線、海風の匂い、岩場の湿り具合。全てが事件の手掛かりになる。


「まずは現場の岩場を見に行こう」

アイゼンの一声で、二人は港を出て橋本の死亡現場へ向かった。道すがらも、猫たちはあちこちに現れ、二人をつぶやくように見守る。黒猫が何匹も交差し、白猫は一匹も見当たらなかった。


岩場に到着すると、血の跡は既に乾きかけていたが、事件の凄惨さは残っていた。アイゼンは冷静に地面を調べ、岩や砂に残る痕跡を指先で確かめる。

「誰かが背後から鈍器で殴った……しかも、岩場で倒れている。黒猫はいたとのことだ……」


カズヤは少し震えながらも、アイゼンの言葉に耳を傾ける。

「……じゃあ、伝承通りのことが」


「……物理的証拠を無視して、伝承に結びつける者がいる。それが、この島では恐怖を増幅させているだけだ」

アイゼンの赤い瞳が、夕暮れに光った。


そのとき、遠くで黒猫が「ニャアアア」と鳴いた。

カズヤが振り返ると、黒猫は砂浜に座り、二人をじっと見つめる。

「……いや、気にするな」

アイゼンはつぶやく。だがカズヤはわずかに背筋を伸ばした。


こうして、魔族のアイゼンハワードと少年カズヤは、猫だらけの島で、黒猫にまつわる伝承と現実の殺人事件の狭間で調査を始める。


次々と見えてくる住民たちの思惑、島の伝承の謎、そして三神建設の利権争い。真実は、猫の影に隠れていた。


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