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完結【51万8千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『さっちゃんとダイ・マオウの魔界の嫁探し 魔王城をたてなおせ!』

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第2話 ゾンビ秘書ルミラの妹とのお見合い

薄曇りの午後、魔王城の広間には小さな光が差し込み、そこに一人の少女が静かに座っていた。


挿絵(By みてみん)


ルミラの妹リリナは、姉に似て清楚で端正な顔立ちをしているが、どこか柔らかな温かみを漂わせていた。肌は蒼白に近いが、血色のないその顔からも凛とした生命力が感じられる。瞳は落ち着いた琥珀色で、感情を押し殺すような冷たさは一切ない。静かに手を組み、微かに笑むその姿は、秘書型ゾンビの姉とは違う家庭的な優しさを内包していた。


ダイ・マオウはその姿を一目見て、義理堅く真面目なルミラの性格が遺伝していることに気づき、心の奥で好感を抱いた。しかし、さっちゃんはすぐに鋭く指摘する。


「魔王さま、覚えておいて。嫁は家族になる存在です。秘書としての相性が良いだけじゃ、家庭ではうまくいかないこともあるんです」


ダイ・マオウは、秘書としての効率や忠誠心に惹かれる自分を自覚しつつも、さっちゃんの言葉に耳を傾けざるを得なかった。


家庭で必要なのは、書類の整理やスケジュール管理ではなく、温もりと信頼。姉のルミラが仕事で示す堅実さは素晴らしいが、それをそのまま家庭に置き換えることはできないのだ。


お見合いの間、リリナはにこやかに笑い、優しい言葉を交わす。しかし、ダイ・マオウの心には、さっちゃんの言葉がちらつき続けた。

「なるほど……家庭の相性と仕事の相性は、別物か……」


「おお……リリナちゃんか。姉に負けず劣らず真面目そうだな」

ダイ・マオウは心の中でつぶやきつつも、眉をひそめる。


「魔王さま、そんなにじろじろ見ちゃダメですよ。礼儀をわきまえないと、私、怒りますから」

リリナは小さく手を組み、丁寧に微笑む。その姿にダイ・マオウは、つい「秘書としては最高だ……」と呟きそうになるが、さっちゃんが耳元で囁く。


「魔王さま、忘れないで。嫁は家族になる存在です。秘書の延長で判断してはいけません」


ダイ・マオウは一瞬考え込む。

「うーん、確かに。家庭で必要なのは、スケジュール管理よりも……温かさか……」


お見合いが始まると、リリナは柔らかく話しかける。


「魔王さま、お好きな料理は何ですか?」

「うーん、最近はカレーだな。辛いのが好きだ」

「辛いの……魔王さまらしいですね。でも、辛すぎると胃に悪いですよ」

「おお、家庭的だな……でも、これって秘書としての気配りじゃ……?」

「魔王さま、結婚は会議じゃありません。愛情と笑いが必要です」


ダイ・マオウは迷う。秘書として優秀なルミラの妹に惹かれる自分と、家庭的な相性を見極めるべきというさっちゃんの言葉の間で揺れる。


「……家庭で秘書能力が役に立つか?いや、違う。愛と笑いだ……」

そのとき、リリナが突然顔を歪める。


「……私、ゾンビ化してしまった……!」


挿絵(By みてみん)


次の瞬間、リリナの肌が青白くなり、瞳が真紅に光り、鋭い牙をむき出しにしてダイ・マオウに襲い掛かる。


「ひぃぃぃ!お、お見合いはこういう展開じゃな――!」

ダイ・マオウは慌てて後退するが、さっちゃんは冷静に手を広げ、


魔王城の広間は、もはやお見合い会場ではなく、リリナのゾンビパークと化していた。壁をかじり、書類をむさぼり、花瓶を頭に被る狂気。ダイ・マオウは背中に汗を滲ませ、必死に逃げる。


「くっ……秘書型なのに……なんて恐ろしい家庭的アピールだ……!」


リリナが突然ジャンプし、ダイ・マオウに向かって襲い掛かる。

「むぐぅ……魔王さまー!」


ダイ・マオウは即座にギャグ戦法に切り替える。


必殺「カレー撒き」

手近な食卓の鍋からカレーを掴み、リリナに投げつける。

リリナは一瞬カレーに気を取られ、顔と服が黄色く染まる。

「うぐっ……辛っ……でもうまい……!」

思わず止まるゾンビ。


必殺「書類バリケード」

散乱した書類をまとめて投げ、簡易バリケードを作る。リリナは書類の山に突っ込んで、もぞもぞと動きが鈍くなる。

「ぐふ……整理されてる……整理されてる……」


必殺「鏡マジック」

鏡を使って自分の姿を見せ、ゾンビの本能を利用。

リリナは鏡の中の自分に向かってジャンプし、壁に激突。

「誰だお前……むぐぐ……!」


その隙に、ダイ・マオウは大ジャンプしてリリナを背中から抱え、巨大クッションの山に叩きつける。

リリナはふわふわのクッションに埋もれ、頭だけがもぞもぞと動く。


「はぁ……はぁ……秘書型でも、嫁候補にはなれないな……」

ダイ・マオウは疲労困憊だが、さっちゃんは冷静に手を組む。

「魔王さま、結婚も戦いも同じです。準備と工夫が大切……」


リリナはクッションの中からもぞもぞと手を伸ばすが、戦意はほとんど回復せず、ギャグチックに丸まって寝てしまう。


ダイ・マオウは深く息をつき、広間の惨状を見渡す。壁にはかじられた跡、テーブルには飛び散ったカレー、床には書類の山。

「お見合い……こんなに過酷だったとは……」


さっちゃんは頭を抱え、ため息交じりに呟く。

「魔王さま……次は、もう少し普通の人間にしましょうね……」


広間に静寂が戻る中、ダイ・マオウはそっと呟いた。

「……しかし、これはこれで家庭の相性を試すいい経験だったかもしれん……」


本日の学びポイント(さっちゃん毒舌解説付き)


家庭の相性=ゾンビ化耐性も試される

→ さっちゃん「家庭ってのはただの書類整理じゃないのよ。嫁候補が突然ゾンビ化しても生き延びられるかどうか、ここで差がつくの。甘く見るな!」


ギャグ戦法でカオス婚活は制御可能

→ さっちゃん「覚えなさい。全員が完璧すぎて爆発寸前でも、ギャグ力があればどうにかなるの。笑いで相手を処理落ちさせるの、これ魔界流婚活の奥義!」


結婚も戦いも、準備と柔軟さが命

→ さっちゃん「頭でっかちじゃダメ。計画倒れの結婚も爆発寸前の婚活も、準備と臨機応変の対応力で乗り切るの。甘い考えは即死よ!」



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