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完結【50万3千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:地の血判』

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第8話 八つ裂き村の地主たち

八つ裂き村の深い霧は、まだ村を覆い尽くしていた。カズヤとアイゼンハワードは、村のあちこちを歩き回りながら、血判状の謎と地主たちの不可解な行動の真相を追っていた。


最初に訪れたのは木下絵里の牧場だった。

「木下さん、少しお話を伺えますか?事件について聞きたいことが…」


木下は手を振り、険しい表情で答えた。

「すみません、今は牧場の仕事が山積みで。話す時間はありません。」


「でも、とても重要なことなんです。」


「重要だとしても、今は無理です。ごめんなさい。」


次に佐々木修三の家を訪れたが、門前で使用人に止められた。

「佐々木様は今、お忙しいのです。何の用ですか?」


「事件のことで話があるのですが…」


「申し訳ありませんが、今はお会いできません。後日にしてください。」


最後に松本慎二の家へ向かうが、松本自身に門前払いされた。

「何か用かね?」


「松本さん、事件についてお聞きしたいことがありまして…」


「事件のことは警察に任せている。私には関係ない。」


「でも、村の未来にとって重要なことです。」


「それでも、話すことは何もない。失礼するよ。」


四人の地主たち木下、佐々木、松本、そして高橋からの情報は一切得られず、カズヤとアイゼンハワードは行き場を失った。しかし、その夜、霧の中を歩く二人の前に、高橋幸子がひっそりと現れた。


「……あなたたちが、まだ追ってきてくれると思っていました」

その声には、長年抑え込まれた恐怖と疲労が滲んでいた。


カズヤは一歩前に出た。

「高橋さん、お願いです。血判の秘密を教えてください。これ以上の犠牲を防ぐためにも」


高橋は目に涙をため、震える手で視線を床に落とした。

「……わかりました。話すしかありませんね」


深く息をつき、彼女は重い口を開いた。

「私たち地主は、釜田治から命令されて『地の血判状』を書きました。村の掟には逆らえなかったのです」


アイゼンハワードが促す。

「その掟とは具体的に、どのようなものなのですか?」


高橋は声を震わせながら答えた。

「村を守るため、必要であれば自分たちの命さえ捧げる――それが掟です。釜田治の命令は絶対でした」


カズヤはさらに踏み込む。

「そして、釜田大地さんの事件に、どう関わっているのですか?」


カズヤは一歩前に出た。

「高橋さん、お願いです。血判の秘密を教えてください。これ以上の犠牲を防ぐためにも」


高橋は目に涙をため、震える手で視線を床に落とした。

「……わかりました。話すしかありませんね」


深く息をつき、重い口を開く。

「私たち地主は、釜田治から命令されて『地の血判状』を書きました。村の掟には逆らえなかったのです」


アイゼンハワードが促す。

「その掟とは具体的に、どのようなものなのですか?」


高橋は声を震わせながら答えた。

「村を守るため、必要であれば自分たちの命さえ捧げる、それが掟です。釜田治の命令は絶対でした」


カズヤはさらに踏み込む。

「そして、釜田大地さんの事件に、どう関わっているのですか?」


高橋は涙を拭い、視線を二人に向けた。

「……私たち四人が犯人だと、村の人々は思うでしょう。でも……本当の黒幕は別にいます」

彼女の声は、かすかに震えていた。


「黒幕……?」

アイゼンハワードが問いかける。


高橋は小さく息をつき、視線を夜霧の向こうにある図書館の方に向けた。

「……伊藤悠子。図書館員のあの静かな女です。すべての事件は、彼女の策略によって……」


霧の向こう、図書館の灯りが微かに揺れ、悠子の姿が窓の影に揺れて見えたような気がした。


「地主たちの血判状は、彼女の計画の一部に過ぎなかった……」

高橋の言葉が、冷たい夜気に吸い込まれていく。


カズヤとアイゼンハワードは互いの目を見交わす。

霧に包まれた八つ裂き村で、真犯人の存在、知的で冷酷な図書館員が、次なる恐怖と謎を密かに待ち受けていることを、二人は理解したのだった。


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