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【ランキング12位達成】 累計52万2千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:地の血判』

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第2話 燃える家、残された血判

翌朝、八つ裂き村を震撼させる報せが駆け巡った。

大地主・釜田治の自宅が炎に包まれ、一夜にして灰と化したのだ。


焦げた木の匂いが村中に漂い、まだ立ち上る煙が霧と混ざり合い、異様な朝を告げていた。

釜田治は自宅の奥の寝室で倒れていた。火傷の痕よりも、一酸化炭素中毒による窒息死が直接の原因とされた。


村人たちは現場に集まり、震え声でささやき合う。

「やっぱり呪いだ…」

「血判に逆らった報いじゃ…」

「火事なんか偶然なはずがない…」


カズヤとアイゼンハワードも現場に駆けつけた。

焼け跡の中を歩きながら、カズヤは鋭い目を細める。

「これはただの火事じゃないな…。油の痕跡がある。火の回りが早すぎる」


その横で、田中が真っ黒に炭化した紙片を拾い上げた。

「カズヤさん、これを…!」


炭となった紙の中に、辛うじて赤黒い線が浮かび上がっていた。まるで燃え盛る炎すら拒んだかのように、その一部だけが残っていた。


「…契約文書か?」

カズヤが身を乗り出す。炭化して内容はほとんど解読不能だが、最後の一文だけが異様に鮮明だった。


『釜田大地』


しかもそれはインクではなく、赤黒く滲んだ血の文字だった。


「血判状……!」

アイゼンハワードが低くつぶやく。


周囲にいた村人たちの顔色が一斉に変わった。

「出たのか……血判が」

「やはり呪いは本当だったのか」

「もう村は終わりだ……」


恐怖に駆られたざわめきが広がる。


ようやく一人の老婆が、かすれ声で呟いた。

「……それを口にしてはならん」


別の男が慌てて老婆の肩を押さえた。

「やめろ、余計なことを言うな!」


村人たちは怯えたように目を逸らし、沈黙が広がった。

まるで、その名を口にするだけで災厄が呼び覚まされるかのように。


町長・佐藤光が険しい表情で前に出た。

「……その紙のことは、ここでは誰にも話さぬように。村人たちは皆、古くからの“ある伝承”を恐れているのです」


カズヤが食い下がろうとした瞬間、アイゼンハワードが制した。

「カズヤ、今は深入りする時ではない。村の者たちは怯えておる。真実は俺たちだけで探ればよい」


カズヤは紙片を握りしめ、煙の残る焼け跡を見つめた。

血で書かれた名、閉ざされた口、そして伝承への恐怖。

それらすべてが、八つ裂き村の深い闇の存在を物語っていた。


そして彼の胸に芽生えたのは、不安と同時に燃え上がる探究心だった。

「……必ず暴いてみせる。この村が隠してきたものを」


こうして、血判状の謎をめぐる調査が始まった。


だがそれは、カズヤとアイゼンハワードをさらなる不穏な迷宮へと誘うことになるのだった。


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