エピローグ 希望を取り戻すために
赤い光は消え、制御室は静寂に包まれていた。
カウントダウンも止まり、核兵器は安全装置で封印されたまま。
ジャスパーが壁にもたれ、汗と血を拭う。
「……本当に終わったのか?」
セリーヌは深呼吸をし、仲間を見回す。
「ええ。でも、油断はできない。ゼフィルがいなくなっただけで、レッドウルフはまだ残っている。」
カテリーナは床に座り込み、腕を組んで苦笑した。
「全身ボロボロよ。でも……勝てた。」
アイゼンハワードは制御室の端末を見つめ、重い声で言う。
「核兵器の発射計画は阻止できた。しかし、彼が残した痕跡。コード、暗号、そして謎の通信。まだ全てを把握できてはいない。」
壁の端に転がるゼフィルの端末が、かすかに点滅する。
そこには赤い文字でメッセージが残されていた。
「世界はまだ、私の計算の下にある。次は君たちが試される番だ。」
ジャスパーが端末を手に取り、眉をひそめる。
「……まだ終わっていない。」
セリーヌは決意の目で端末を睨む。
「次の戦いも、必ず止める。」
カテリーナが立ち上がり、仲間たちを見渡す。
「疲れたけど……やるしかないわね。」
アイゼンハワードは端末を握り、低く呟く。
「次こそ、完全に終わらせる。」
静かに、しかし確実に
制御室の扉を開けた4人。
外の廊下には、まだ赤い警報灯の残像が揺らめく。
だが、彼らの背中には、決して揺るがない覚悟と信念があった。
廊下の奥、暗闇の中でかすかな影が消えた。
レッドウルフの残党か、それとも別の勢力か。
世界はまだ、完全に安全ではない。
だが、今はただ一歩ずつ、希望を取り戻すために進む。
赤い陰謀は止められた。
しかし、戦いは終わらない。
4人の物語は、ここから新たな章へと続く。
制御室を後にした4人の背中に、冷たい闇が忍び寄る。
廊下の赤い光は消え、静寂だけが支配する。
その瞬間――遠くの窓ガラスに、かすかな人影が映る。
黒いスーツに身を包んだ男の姿。銀白の髪が微かに揺れ、鋼の瞳が赤い残光を受けて冷たく光った。
端末には、影武者が残した暗号がまだ残されている。
男は微笑み、低く呟いた。
「影武者は任務を終えた……だが、私の計画は始まったばかりだ。」
手元のタブレットに世界地図を映し出す。
赤い点が複数浮かび上がり、それぞれが戦略拠点を示していた。
「この世界を再編し、赤い秩序の下に組み替える……東京、ベルリン、ニューヨーク……全ては次の舞台だ。」
男の指が次の目標を指す。
「正面からの戦いだけでは、勝てぬ……。影を操り、世界を揺さぶる。」
そして闇の中へ、音もなく消えていく。
わずかに揺れるカメラの残像が、次なる戦いの到来を告げていた。
制御室に残るのは、赤い残光と静寂。
そして、4人がまだ知らぬ、世界規模の陰謀の影。
戦いは、完全には終わっていない。
赤い秩序の影は、既に動き出していた。
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ16-赤い共産主義 ・死線のパトス』
ー完ー




