第12話 核兵器前での戦闘 序盤・中盤
制御室 カウントダウン 9分25秒
赤い光が点滅するたびに、影が伸び縮みする。
空気が爆ぜるように、4つの戦いが同時に始まった。
戦闘①:ジャスパー vs ヴォルフガング
鋭いナイフの閃光が、まるで稲妻のように走る。
ヴォルフガングは音もなく背後に回り込み、低く囁いた。
「もう一度、背中から喉を裂いてやろう。」
ジャスパーは反射的に銃を抜き放ち、乾いた銃声が弾ける。
弾丸はすれ違う刹那にヴォルフガングの頬を掠め、赤い線を残した。
戦闘②:セリーヌ vs ルシアン
高所の足場に跳び乗ったルシアン。ライフルの銃口がセリーヌを正確に捉える。
「私はお前の動きをすべて知っている。予測も、息づかいも、狙いも。」
セリーヌは床に身を投げ、弾丸が彼女の後ろの鋼鉄を貫く。
火花が散り、セリーヌは低く息を吐いた。
「じゃあ、師を超える一手を見せてあげる。」
戦闘③:カテリーナ vs イヴァン
巨腕が風を裂き、鉄柱ごと床に叩きつけられる。
「砕けろォ!」
轟音とともに金属が歪む。
カテリーナは紙一重で跳躍し、しなやかな脚でイヴァンの顎を蹴り上げる。
だが、イヴァンは一歩も下がらず、不敵に笑った。
「悪くない。だがその細い足じゃ、この岩は砕けん。」
戦闘④:アイゼンハワード vs オットー
オットーが端末を操作すると、制御室の壁面からドローンが一斉に浮かび上がる。
「老兵の腕で、何体撃ち落とせるかな?」
アイゼンハワードは姿勢を崩さず、正確無比にトリガーを引く。
一発、二発――無駄のない射撃で次々とドローンを撃墜する。
「数で押すのは貴様の常套手段だな。だが私は戦場で数百の兵を指揮してきた。貴様ごときの計算には沈まん。」
オットーの目が鋭く光り、背後の制御盤が点滅を増していく。
銃声、金属音、肉体の衝突、そして冷たい警報。
4つの戦闘が同時進行し、制御室はまるで戦場の縮図と化す。
「残り時間、8分50秒。」
制御室 ― カウントダウン 8分45秒
赤い警報灯の点滅が早くなる。
機械音声が無情に繰り返す。
「残り時間、8分30秒。」
4つの戦場は、次第に英雄たちを飲み込んでいった。
戦闘①:ジャスパー vs ヴォルフガング
ヴォルフガングの影が揺れた次の瞬間、ジャスパーの手首に冷たい刃が走った。
「ぐっ……!」
血が滴り、銃が床に弾かれる。
ヴォルフガングは笑いながらジャスパーの首筋にナイフを当てる。
「銃を失った諜報員はただの的だ。今度こそ確実に仕留める。」
ジャスパーの額に汗が流れる。
戦闘②:セリーヌ vs ルシアン
ルシアンのライフル弾が正確無比に壁を貫き、跳ね返る破片がセリーヌの肩を裂いた。
「っ……!」
血が滲み、彼女は後退を余儀なくされる。
ルシアンは冷たい声で告げる。
「私が教えた通り、お前は動揺すると左に体重をかける。読みやすい…いや、“まだ弟子のまま”だな。」
セリーヌは唇を噛み、目に怒りを宿す。
戦闘③:カテリーナ vs イヴァン
イヴァンの巨腕がカテリーナの防御を貫き、背後の壁に叩きつけた。
空気が肺から押し出され、彼女の視界が一瞬揺らぐ。
「カハッ……!」
イヴァンは笑いながら床を踏み鳴らす。
「どうした小娘、俊敏さはどこへ行った? 虫の羽音のようだ!」
カテリーナは膝をつきながら、必死に呼吸を整える。
戦闘④:アイゼンハワード vs オットー
オットーが操作する端末から制御盤の電磁波が走り、アイゼンハワードのライフルが一瞬フリーズする。
「なに……!?」
その隙を突き、残ったドローンが一斉に火線を浴びせる。
アイゼンハワードは柱に隠れざるを得ず、銃弾が壁を砕く。
オットーは冷酷に笑う。
「時代は変わった。お前の銃も頭も、もはや時代遅れだ。」
アイゼンハワードの顔に苦渋が浮かぶ。
ナイフが首筋をなぞる。
銃弾が肩を撃ち抜く。
巨腕が壁に叩きつける。
ドローンが弾丸の雨を降らせる。
対異能特務課チームたちは一斉に劣勢へと追い込まれた。
「残り時間、8分。」
警報がさらに加速し、制御室の空気は息が詰まるほどの緊張で満ちた。
赤い光の中、勝者も敗者も決まらぬまま、さらなる死闘が加速していく。




