表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計52万2千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:死刑執行人』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

663/1265

第9話 プラハ、核開発亡命科学者の影

チェコ共和国 冬のプラハ。


ヴルタヴァ川沿いの街灯は、湿った霧に飲まれて霞んでいた。古都の石畳を踏みしめるたびに、アイゼンの長いコートの裾が冷気に揺れる。


「亡命したはずの科学者が、再びロシア側に協力している。」

セリーヌが低い声で呟いた。


彼女たちが追う標的は、冷戦時代にソ連で核兵器開発に携わった物理学者 アレクセイ・ドラゴミロフ。表向きはチェコに隠遁していたが、レッドウルフが裏で接触し、再び暗黒の計画に引き込んでいるという情報があった。


MI6はこの科学者を「ザ・シャドウ」と呼び、存在の確認と確保、もしくは排除を命じた。


カレル橋の上でジャスパーはポータブル端末を操作しながら、古い石像の影に身を潜めていた。

「監視ドローンの反応あり。橋の向こうで複数の武装集団が待ち伏せしてるな。……歓迎してくれるらしい」


カテリーナはスカーフを巻き直し、低く笑った。

「プラハでロマンチックな夜を期待してたけど、どうやら血の匂いしかしないようね」


アイゼンは赤い瞳を細め、ゆっくりと首を横に振る。

「気を抜くな。奴らは科学者を餌に、我々を罠へ誘っている」


その瞬間、霧の奥から銃口の閃光が走った。


銃撃戦は石畳の路地に広がり、MI6の一行は入り組んだ旧市街の通りを駆け抜ける。セリーヌが先頭でスナイパーを牽制し、カテリーナが背後の追撃者を正確に撃ち抜く。

ジャスパーは携帯型EMPを起動し、敵の通信機器を一斉に無力化した。


「今だ、北塔へ!」

アイゼンの指示に従い、彼らは旧市街広場を抜け、プラハ城を望む丘へと向かう。


そこには古びた修道院を改造した秘密の研究所が潜んでいた。

扉を破って突入すると、奥の部屋に一人の男がいた。

白髪に伸びた髭、深い皺の中に光る鋭い眼。

アレクセイ・ドラゴミロフ。


しかし彼は椅子に縛られ、額から血を流していた。

「遅かったな……奴らはもう……核の設計図を持ち出した……」


セリーヌが駆け寄り止血を試みるが、男は苦痛に顔を歪めながら口を開いた。

「ゼフィル……あの男は……師よ、お前を待っている……」


アイゼンの瞳に赤い光が宿る。

「ゼフィル……やはりここか」


次の瞬間、建物全体が揺れ、爆発音が轟いた。

窓の外に炎が立ち昇る。

レッドウルフが証拠隠滅を図ったのだ。


薄暗い研究室を抜け、ジャスパーは科学者の残したノートを握りしめた。

「プロジェクト・アルカディア…赤い鍵…第三次世界大戦…」

声に出すだけで、背筋が凍る。セリーヌも隣で息を整え、机の上に散らばった記号を指でなぞった。


「これ…暗号ね。解析すればゼフィルの狙いがわかるはず。」

彼女の声には冷静さがあるが、目は危険を警戒して鋭く光っていた。


背後から、レッドウルフの兵士たちの足音が近づく。


「時間がない…!」

ジャスパーはノートを胸に抱え、廊下を駆け抜けた。

セリーヌも続く。研究室の扉を閉め、電子ロックがかかるまでの一瞬の間、二人は息をひそめた。


廊下の端、巨大な倉庫の扉が彼らを待つ。そこには、核兵器が保管された秘密施設の入口があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ