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完結【51万3千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:死刑執行人』

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第7話 ベルリン交錯戦

ベルリン旧東地区。かつては軍需工場だった巨大な煉瓦建築が、いまは秘密警察の研究拠点として再利用されていた。


外観は古びた倉庫にしか見えないが、厚い鉄扉の奥はまるで要塞だった。


挿絵(By みてみん)


地下に潜ると、そこには無数の蛍光灯が並び、白い光が冷たく床を照らす。

壁際には自動小銃を抱えた兵士が等間隔に立ち、廊下を歩く研究員たちは怯えたように肩を縮めていた。


監視カメラは死角なく配置され、レーザーセンサーが通路を覆っている。

階層は大きく三つに分かれていた。


地上階:正門を守る重装兵と、厳重なチェックポイント。

中層フロア:研究室が並び、白衣を着た科学者たちが拘束された状態で実験を強いられている。

地下階層:兵器開発の中枢。冷却装置が唸りをあげ、そこには巨大な金属カプセルが鎮座していた。


そのカプセルには放射線警告マーク。

「移送中の核兵器」と思われる危険物が、重警備の中で準備されていた。


施設内には常時百人以上の兵士が展開していた。

その大半は防弾ベストに黒いヘルメットをかぶり、アサルトライフルを構えている。

さらに、ゼフィル直属の 特別部隊「影の処刑人」と呼ばれる暗殺兵たちが、要所に潜んでいた。


彼らは黒いスキーゴーグルで顔を覆い、サプレッサー付き拳銃と刃物を携帯している。気配を殺し、獲物を狩る狼のような動きだ。


空気は硝煙と消毒液が混じり、息苦しいほどに重い。

どこかで機械の軋む音、鎖の鳴る音、そして……時折、押し殺した悲鳴が響いていた。


この施設そのものが一つの牢獄であり、そして処刑場であるかのようだった。


アイゼンたちMI6チームは、ゼフィルの暗号が示した場所に潜入していた。そこは表向きは「歴史資料館」だが、裏では秘密警察の研究拠点として機能していた。


ジャスパーが持ち込んだ解析装置で、さらに暗号を深く読み解く。

「……ふむ。やはり奴は二重スパイだな」


画面に現れたのは複雑な通信ログ。ゼフィルが秘密警察の作戦計画に協力しつつ、同時に別の勢力「レッドウルフ」の名で活動している痕跡が浮かび上がった。


セリーヌが拳を握る。

「どういうこと? 自分の仲間を裏切ってでも、自分の計画を優先してるってこと?」

アイゼンは静かに答えた。

「ゼフィルは常に、自らが支配者である状況を作りたがる。二重スパイは彼にとって裏切りではなく、支配の手段にすぎん」


研究施設の奥で、アイゼンは通信端末を通じてゼフィルの声を聞いた。

「師よ……この街でもう一度試してみようじゃないか。あなたが人質を救えるのか、それとも資料を守れるのか……どちらかしか選べない」


冷笑を含んだ声が、コンクリートの壁に反響する。

セリーヌが焦りの声をあげる。

「人質は……十数人。施設の地下。けど同時に、上階の研究室には兵器計画の


中枢データが!」

ジャスパーは歯噛みする。

「くそっ、奴は完全にこちらを分断するつもりだ」


研究所の爆破カウントダウン


突如、施設全体にアラームが鳴り響く。

「爆破まで残り10分」

赤いライトが回転し、鋼鉄の扉が一斉に閉じる。


アイゼンは赤い瞳を細め、マントを翻した。

「二択を迫るのはゼフィルの常套手段……だが、私は両方を救う」


カテリーナが銃を構え、冷徹に言った。

「時間を無駄にすれば、全員が死ぬ。あなたの采配を信じるわ、アイゼン」


アイゼンは仲間を二手に分け、ジャスパーと共に研究データの奪還へ。

セリーヌとカテリーナは人質救出へ。

残された時間はわずか。


研究所の奥で、ゼフィルの影が監視カメラ越しに笑っていた。

「さあ、師よ。お前の“パトス”はどちらを選ぶ?」


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