第十話 海のトリトン
禁術により召喚された暴虐の《鉄壁の巨人ゴルザン》が、倒された。
瓦礫と土煙が渦巻く中、俺たちの体にじんわりとした温もりが広がる。
それは、俺たちの確かな「成長」の証だった。
俺リスク、勇者アルベルト、シスターマリア、海賊グレイス・オマリー、そしてバルドルの五人は、この戦いの果てに
一気にレベルが3も上がった。
勇者アルベルトの体にじんわりとした温もりが広がる。
《勇者アルベルトのレベルが上がった!》
《体力が70上がった!》
《力が42上がった!》
《防御が50上がった!》
《素早さが48上がった!》
《賢さが40上がった!》
《魔力が22上がった!》
《運が16上がった!》
《新しい魔法「ビュアハート」を覚えた!》
「ビュアハート…? なんだか……こう……心が浄化される気がするな。」
勇者が非行にはしってもピュアなハートをとり戻す魔法を覚えた。
シスターマリアの周囲にも優しい光が舞う。
《シスターマリアのレベルが上がった!》
《体力が35上がった!》
《魔力が48上がった!》
《素早さが12上がった!》
《賢さが42上がった!》
《新しい魔法「グレイス・サンクュチュアリ」を覚えた!》
「神に感謝を……。この力、また誰かを癒やすために使わせていただきますわ」
「それと敵を成仏させるためにな」
と俺が突っ込むと、シスターマリアは微笑を浮かべながら軽く咳払いをした。
リスクの体にじんわりとした温もりが広がる。
《リスクのレベルが上がった!》
《運が60上がった!》
《賢さが55上がった!》
《新しいスキル「大きな声を出す」を覚えた!》
「……おい、マジかこれ。大きな声を出す? 俺、ついに応援団員になれた?」
「いや、きっと敵の注意をひきつけるとか…陽動のプロってことだよ」
とアルベルト。
「戦場での声援、案外あなどれませんからね」
とシスターマリア。
「どっちにしろ、うるさくなる未来しか見えないな」
バルドルがぼそっと言って、皆吹き出した。
グレイスオマリーの体にじんわりとした温もりが広がる。
《グレイスオマリーのレベルが上がった!》
《体力が80上がった!》
《力が65上がった!》
《防御が20上がった!》
《素早さが10上がった!》
《賢さが15上がった!》
《魔力が5上がった!》
《運が40上がった!》
《新しい特技「だまし討ち」を覚えた!》
「ふふ……背後に気をつけることね。これからは、いつでも“後ろ”から刺せるわよ」
「なんか物騒なスキルだな…!」
俺が思わず後ずさる。
そして、瓦礫の中でひときわ異彩を放つ宝箱を、アルベルトが発見する。
「これは……!」
俺たちは宝箱を開けた。中に入っていたのは
《海のトリトン》
海賊船をまるで潜水艦のように深海へといざなえる、超レアアイテム。
「これで……ついに行ける!」とグレイス・オマリーが声を上げる。
「伝説の……『海底神殿アビス・ノクス』だな」
シスターマリアが神妙な顔つきでうなずいた。
「やっと準備が整いましたね……」
と静かに言うシスターマリア。
そのとき、バルドルがぼそっと呟いた。
「……俺、泳げないから無理」
一瞬の静寂の後――
「ぷっ……!」
「ははははは!」
「泳がなくていいのよ! 海野トリトンで包まれた海賊船で行くんだから!」
とグレイスが笑いながら背中を叩く。
「そうそう、バルドルが泳ぐ姿なんて想像しただけで沈みそうだしな」と俺も茶化す。
「うるさい。俺は戦う専門だ」
「じゃあ、溺れたら戦いながら浮かべ」
とアルベルト。
「ふふ、バルドルさんには特製の浮き輪を用意しておきますね」
とシスターマリア。
「やめろォォォ!!」
とバルドルが叫ぶと、またみんなで笑い声を上げた。
その声は、崩れかけた神殿の中でも、確かに勝利の余韻を響かせていた。
(深海へ行くのね。私の故郷へも寄るのかしら)
黒魔術師マーリンの視線は、冷たく、深い深海の漆黒の闇のようだった。
【第四部 完】