第5話 秘密警察特別部隊との乱闘
装甲扉を爆破しようとした瞬間――
車両の両端から影が一斉に飛び込んできた。黒いマスク、冷徹なゴーグル、統一された暗色の特殊装備。
「……来たか。」
アイゼンは赤い瞳を細めた。
ゼフィル直属。秘密警察特別部隊。
選りすぐりの暗殺者たちが、列車内部を一瞬で制圧しようと襲いかかる。
ギィン! ガガガガガッ!!
刃と銃弾が交錯し、狭い車両の中で死闘が展開された。
セリーヌは敵兵の背後に回り込み、ナイフで喉を断ち切る。
「数が多すぎる……でも負けない!」
カテリーナは狭い通路に身を伏せ、二連射の精密ショットで暗殺兵を次々と撃ち抜く。
「狭所戦闘なら、こっちの方が有利。」
ジャスパーは煙幕装置を転がし、電子閃光を起動させた。
「奴らのゴーグルを潰す! 今だ、やれ!」
白煙と光が車両を満たし、敵の視界が一瞬奪われる。
その刹那、アイゼンが前に躍り出た。
「愚か者ども、俺の前に立つな。」
ドゴォォォォォン!!
魔族のエネルギー弾が炸裂し、十数名の特殊部隊員をまとめて吹き飛ばす。
そして、ゼフィルが姿を現した。
沈黙が訪れた。
だが次の瞬間、車両の奥から拍手の音が響いた。
パチ……パチ……パチ……
煙の奥、ゆっくりと歩み出る影。
冷たい銀髪に、蒼白の瞳。皮肉げな笑みを浮かべ、優雅に現れたのは――ゼフィル。
「師よ……相変わらず豪快だな。」
アイゼンの目が鋭く光る。
「ゼフィル……やはり生きていたか。」
ゼフィルは肩をすくめ、列車の壁に軽く指をなぞった。
「死線はいつも心地いい。だが今回は違う……俺は"新しい主"と歩んでいる。」
セリーヌが銃を向け、カテリーナも構える。
だがゼフィルは一歩も動じない。
「撃ちたければ撃てばいい。だが――核はもう移送済みだ。ここにあるのは“影”にすぎない。」
アイゼンの胸に重苦しい衝撃が走る。
「……貴様。」
ゼフィルの笑みが深まる。
「決着はまだ先だ、師よ。次に会うとき――俺は完全に、お前を超えている。」
その言葉と同時に、列車の床下で爆薬が炸裂した。
ドゴォォォォォォンッ!!
衝撃で車両が大きく傾き、列車は雪原に炎の帯を描きながら脱線していく。
衝撃で車両全体がぐらりと大きく傾いた。
鉄と鉄が軋み合い、耳をつんざく悲鳴を上げる。
ギャアアアアアッ!!
鋼鉄の車輪がレールを外れ、火花を散らしながら暴れ狂う。
振動は車内を地震のように揺さぶり、乗員も死体も無差別に壁へと叩きつけられる。
武器が宙を舞い、硝煙と火薬の匂いが混ざり合う。
「みんな!つかまれッ!!」
セリーヌの叫びが轟音に飲み込まれ、アイゼンは咄嗟に仲間を腕で庇った。
次の瞬間、ゴガガガガガァァァン!!という大音響と共に、車両が横転。
分厚い鉄板がねじ切れ、窓ガラスが粉砕し、吹雪が怒涛のように雪崩れ込む。
装甲列車は巨大な蛇のように身をよじりながら、雪原を切り裂いて進んだ。
白銀の大地に炎の帯が走る。
積み荷の燃料が爆ぜ、オレンジ色の火柱が夜空へと突き刺さる。
雪原は一瞬で地獄と化した。
氷の大地に火と煙が舞い、遠くからでも見えるほどの赤黒い閃光が、シベリアの闇を焼き尽くしていく。
車両は連結を引きちぎられながら次々と横転し、最後には轟音と共に
ドガァァァァァァンッ!!
雪原に突き刺さり、炎の柱を立ち上げて完全に停止した。




