第8話 古びた額縁にあった写真
ペンション「雪華」に漂う不穏な空気は、もはや隠しようがなかった。
地下通路で発見された手がかりをもとに、カズヤとアイゼンハワードは館内を再び調査していた。
食堂の壁に飾られた古びた額縁。その奥から見つかった一枚の写真が、すべてを揺るがす。
「これは……」
カズヤは思わず息を呑んだ。
写真には、まだ若い中村聡夫と笑みを浮かべる鈴木大輔の姿が並んで写っていた。
二人は肩を組み、まるで親友同士のように映っている。
「信じられない……。中村と馬場が、友人?」
アイゼンハワードが低く呟くと、食堂に集められた宿泊客たちがざわめき始めた。
「でも鈴木さんは……馬場の事件を題材にして小説を書いたって言ってたじゃない!?」
「ただの取材や創作じゃなかったのか……?」
「まさか……共犯?」
疑念の渦は、瞬く間に広がっていった。
カズヤは写真を握りしめながら冷静に分析する。
「少なくとも、鈴木と馬場が過去に深く繋がっていたのは事実だ。
小説にしたのは偶然ではなく、内情を知っていたからかもしれない。」
アイゼンハワードはさらに推測を重ねる。
「となると……鈴木の死も単なる犠牲者ではなく、“口封じ”の可能性が高い。」
その言葉に、宿泊客たちの表情が一斉に凍り付く。
「じゃあ、この中に鈴木を黙らせる理由を持つ人間がいる……?」
「そんな……もう誰も信用できない……!」
誰かが震える声で呟いた瞬間、疑心暗鬼が一気に爆発した。
宿泊客たちは互いに睨み合い、誰もが誰かを犯人と決めつけようとし始める。
カズヤは声を張り上げた。
「落ち着け! 今の段階ではまだ断定できない!
だが、鈴木がただの“観察者”じゃなかったのは確かだ!」
アイゼンハワードが写真を掲げ、鋭い視線で宿泊客たちを見渡した。
「この真実を隠そうとした者が、今回の連続殺人の首謀者に最も近い。
そして、その人物は、この場にいる。」
食堂の空気は凍りつき、誰もが息を潜める。
だがこの時、まだ誰も気づいていなかった。
“真実の自白”は、さらに深い闇の底からゆっくりと顔を出そうとしていたのだ。
そして、ついに真実を告げた。




