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【ランキング12位達成】 累計53万PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:死刑執行人』

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第4話 死刑執行人

ペンション「雪華」での朝は、穏やかどころか、張り詰めた不安に包まれていた。凍死した囚人の発見に続き、館内はまだ深い沈黙に覆われている。宿泊客たちは互いの視線を警戒し、誰もが少しずつ疑心暗鬼に染まっていた。


田中健一は居間の窓辺に立ち、吹雪で白銀に染まった裏庭をじっと見つめる。

「…この事件、偶然では片付けられないな。」


隣に立つ寺田恵理子も、手にしたノートをぎゅっと握りしめる。

「健一さん、何か大きな陰が潜んでいる気がするわ。私たちで調査を始めるべきよ。」


伊藤誠一は論理的な思考で周囲を見渡し、技術的な可能性を冷静に分析していた。

「通信はすべて途絶している。外部との連絡は不可能。ここで起こることは、全て館内で完結するはずです。」


小林花は明るく声を張りながらも、内心の不安を隠せずにいた。

「こんな素敵なペンションなのに…何か、嫌な予感がする…。」


鈴木大輔はノートに視線を落とし、観察力を研ぎ澄ませる。

「…動機やパターンには共通点があるはずだ。」


山本拓也はカメラを手にし、吹雪が止んだ庭を撮影する。雪に残る足跡や微かな痕跡を見逃さないつもりだった。

「明日になれば、雪が消えて証拠も消える。今のうちに確認しておかないと。」





その夜、館内の時計が深夜1時を指すころ。

再び、2階のある宿泊客の部屋のドアの隙間に、一枚の手紙が差し込まれた。


【馬場紀夫の死について話がある。裏庭に夜1時に来てほしい】


手紙を手にした者の心臓は、恐怖で激しく打ち震えた。雪に覆われた裏庭、月明かりだけが道を示す。階段を慎重に降り、雪を踏む音を最小限に抑えながら、彼は裏庭に向かう。


その時、雪の中から現れた影は、月光に銀の刃を反射させていた。

「…そ…そうか、あなたが…」

影は微動だにせず、冷たい沈黙で応えるのみ。


彼は後退りし、息を呑む。刃が微かに光り、氷のような冷気が肩越しに伝わる。

「俺がここに来たのも…天命か、運命か、宿命か…」


その時、影の口がゆっくりと開き、低く、金属を噛むような響きで放たれた。



「…死刑 ヲ 執行スル」



影はゆっくりと踏み出し、宙を切るような動作で鈍器で頭部を殴った。


血が雪に赤く滴り、冷たく凍りつく。声は出ず、ただ体が力なく倒れ込む。

刃は短く鋭く、確実に命を断つ。その所作は機械的で、感情の欠片もない。


倒れた体の傍で、影は一瞬立ち止まり、月光に浮かぶ赤い血痕を見下ろす。

その姿は、人間の理解を超えた冷酷さを帯びていた。





翌朝、寺田健一と寺田恵理子は裏庭に出ると、白銀の雪の中に無惨な姿を見つけた。


中村聡、 元警察官で、館内でも誰からも慕われていた人物が、新たな犠牲者となっていた。


アイゼン・ハワードは沈黙したまま現場を見下ろし、孫のカズヤが冷静に分析する。

「この死には明確な意図があります。偶然ではありません。」


「その通りだ、カズヤ。次の手がかりは、必ず現場の細部に隠されている。」


鈴木大輔はメモ帳に文字を走らせ、冷静な声で呟いた。

「犯人は、この館の中で我々を試している。」


寺田健一は宿泊客たちに向かい、低く力強い声で告げた。

「皆さん、これは偶然じゃない。犯人はここにいる。我々全員で協力して、次の犠牲を防ごう。」


外では雪が静かに舞い、白銀の世界は再び何かを隠すように沈黙した。

ペンション「雪華」に、見えざる恐怖の影が確かに忍び寄っていた。


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