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【ランキング12位達成】 累計56万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:死刑執行人』

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序章 ペンションへの招待状と忘れられぬ記憶

雪が静かに降り積もる夜、アイゼン・ハワードの書斎に、ひときわ重みのある封筒が届いた。赤い蝋で封がされたその封筒には、見覚えのある筆跡でこう記されていた。


「山奥のペンション『雪華』、開業10周年に際し、特別な客としてご招待申し上げます。」


アイゼンは一瞬、指先が微かに震えるのを感じた。紅い蝋の光が、書斎のランプの黄昏に揺れる。文字は美しく、しかしどこか冷たく、甘美な匂いとともに潜む影を感じさせた。


「…ただの招待状ではないな」

彼は独りごちた。473年の歳月を経ても、直感は衰えていなかった。何かが、この雪深い森の奥で、静かに待ち構えている。


そんな予感が走る。


そこへ、孫のカズヤが入ってきた。

「アルおじさん、何か変ですか?」


「うむ、何とも言えぬ空気だ。封筒ひとつで、人の心をざわつかせるものは久しいな…」


カズヤは首をかしげる。

「怪しいですね。行くんですか?」


アイゼンは赤い瞳を細め、微笑むように唇を動かした。

「行くさ。だが、用心は怠らぬ。これは…ただの記念日ではない。」


同じ頃、雪深い山道を、宿泊客で新婚の寺田 健一と寺田恵理子が進んでいた。都会の喧騒を離れ、自然に囲まれたこの場所で、穏やかな休日を迎えようとしている。しかし、森は何も語らず、ただ冷たい雪だけが降り積もる。


ペンション「雪華」の中では、オーナーの田中美和が、亡き夫・与志郎との日々を思い出していた。

「あなた、10年経っても、やっぱりこうして二人で夢を形にできていたわね」

かつての笑い声や、小さな喧嘩、二人で描いたペンションの設計図が、彼女の脳裏に淡く浮かぶ。与志郎はもうこの世にはいないが、彼女の胸には、あの頃の温かさと決意が今も息づいていた。


アイゼンが招待状を手にしてペンションの前に立ったとき、雪の冷たさが肌を刺した。だが、心の奥に、田中美和の想いと、亡き与志郎の記憶が微かに揺れるように感じられた。


この場所には、表向きの祝福とは別の、何か深い事情が隠されている。


「…カズヤ、用心するのだ。ここには、人の心を試す何かがある」

カズヤは小さく息を飲み、深く頷いた。


「わかりました、アルおじさん。でも、ちょっとワクワクもしますね」

アイゼンは苦笑いし、雪に染まる森の向こうに、赤い屋根のペンション「雪華」を見つめた。


静寂に包まれた雪の夜。

それは、不可解で恐ろしい事件の幕開けを告げる、静か序章に過ぎなかった。


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