フェーズ12 宇宙ステーション攻防 最終決戦
宇宙ステーション Λ-Nexus制御球の間。
青白いコアが轟音を放ち、ステーション全体が振動する。
赤いカウントダウンが虚空に浮かび上がり――
「GRAVITY CANNON 起動シークエンス」
発射対象:アメリカ大陸/魔界大陸
タイム残り:300秒
「フフ……見える? 地球の二つの大陸が、やがて空へ飲み込まれていく光景を!」
アリシア・ヴァルデスの外套が広がり、無重力の闇で翼のように舞う。
その瞳は狂気と歓喜に燃え、彼女は制御球の中心に立つ。
「アイゼン……お前はもう遅い! 私の勝利よ!世界は解き放たれ、重力の檻から自由になるの! その先で、人類も魔族も。すべてが再誕するのよ!!」
残り:240秒
アイゼンは黒い魔剣《断罪ノ刃〈ギロティーナ〉》を構え、重苦しい声で応じる。
「再誕だと……? お前の望みは救いではない。ただの破壊と狂気だ」
アリシアの身体が蒼光に包まれ、第一変身・グラビティシフト形態へ。
全身を走る青い紋様が、彼女自身を「生きた重力場」へ変貌させる。
「私こそが、重力そのもの!」
その瞬間、無数の空間断層がアイゼンへ迫る。
重力波が刃のように空間を切り裂き、通路の鋼鉄が液体のように曲がる。
アイゼンはギロティーナを振り抜き、影の刃で応戦。
「断罪ノ影、虚空断ち!!」
黒と蒼が衝突し、Λ-Nexus全体を揺さぶる轟音。
ステーションの外壁が剥がれ、宇宙の星々が閃光の間から覗いた。
残り:120秒
アリシアが咆哮し、第二の変貌を遂げる。
「もっと……もっとよ! この星を丸ごと抱き潰してみせる!」
彼女の肉体は崩壊し、黒い外套は千の触腕のように伸びる。
第二変身・重力獣グラヴィトン・モード
制御球のエネルギーを喰らい、ステーション全体を「巨大な重力生命体」に変えてしまった。
彼女の一撃ごとに、床も壁も“潰れる”ように消滅。
その余波でアイゼンは制御室ごと外壁に叩きつけられ、地球の青い光を背に吹き飛ぶ。
「ぐぅぅっ……!」
黒い魔剣を突き立て、かろうじて姿勢を保つ。
アリシアは狂気に笑う。
「どうした!? 断罪者よ! 世界の終焉を前にして、その刃はまだ届かない!」
残り:60秒
アイゼンの影が制御室全体を覆い始める。
その身体は漆黒の鎧に包まれ、ギロティーナが禍々しいほどに巨大化する。
「……断罪の時だ」
第三形態・影帝。
漆黒の羽根が宇宙空間に広がり、Λ-Nexusの光を飲み込む。
アリシアが叫ぶ。
「来なさいアイゼン! ここで勝てば、私が新世界の神となる!!」
両者が疾駆し、空間が何度も崩壊と再構築を繰り返す。
重力の槍と影の刃が交錯し、数秒ごとに制御室が消え、また再生する。
「断罪ノ刃――終極ノ裁断!!」
「グラビティ・キャノン――全解放ッ!!」
二つの絶対的な力が正面から激突し、宇宙ステーションΛ-Nexus全体が白と黒の閃光に包まれる。
その時。
「間に合ったぜぇぇ!!」
通信に割り込むジャスパーの絶叫と共に、制御室の扉が爆発。
クロエが端末を抱えながら叫ぶ。
「カウントダウンのハックは私がやる! 時間を稼いで!」
セリーヌとマルコが銃火を浴びせ、アレックスが雷光と共に乱入。
「アイゼンを死なせるかァァ!!」
仲間たちの連携攻撃がアリシアの集中を乱し、発射シークエンスが一瞬だけ鈍る。
残り:10秒
アイゼンは最後の力を振り絞り、漆黒の剣を振り下ろす。
「……これで、終わりだッ!」
宇宙ステーションΛ-Nexusを揺るがす閃光。
発射直前の重力砲が、制御球ごと真っ二つに断ち割られた。
宇宙に広がるのは、静寂。
地球の青はまだ輝きを保っていた。




