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【ランキング12位達成】 累計54万9千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:冥界から届いた遺書』

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フェーズ11 宇宙ステーション攻防 重力の鎖を断つ

赤黒い結界が唸りを上げ、制御球の間全体を飲み込む。

金属アームが鞭のように蠢き、重力の奔流がアイゼンを押し潰さんと収束していく。


アリシアはその中心で狂気の光を宿した眼差しを放ち、両腕を広げた。

まるで舞台の主役として、自らの思想を全世界へと響かせるかのように。


「見える? 地球は病んでいる。都市は腐敗し、海は汚され、人間は欲望に溺れ続ける……」

彼女の声は甘美で、同時に刃のように冷酷だった。


「だから私はラスト・コアで地球の“重力”そのものを書き換える。 大陸は浮かび、海はひっくり返り、空は裂け……旧き文明は音を立てて崩壊するのよ」


スクリーンには、大気の渦に飲まれて浮遊する都市群、引き剥がされ漂う大地、海底から浮上する暗黒の海流が映し出される。

人類の営みは脆く、玩具のように宙に散っていく。


アリシアは恍惚と笑い、結界を操ってさらに重力を強める。

「無重力の新世界、そこには階級も、国家も、歴史すらない。私の選んだ“強き者”だけが支配する世界!」


ガァンッ!


その瞬間、制御室を覆う闇が蠢いた。

圧し潰されていたはずのアイゼンの影が、まるで生き物のように膨張し、赤黒い結界を裂きながら伸びていく。


アイゼン・ハワードの瞳が闇の中でぎらりと光る。

「……歴史を切り捨てるだと? 甘い。お前はただ、自分の狂気に酔っているだけだ」


ギロティーナが、悲鳴をあげるように脈打った。

漆黒の刃から奔出した影が一斉に鞭のようにうねり、アリシアの金属アームと激突。


ガギィィィンッ!!


火花と影が交錯し、結界の天井から次々と光パネルが砕けて宙を漂う。

押し潰していた重力が一瞬だけ揺らぎ、アイゼンは身を翻して虚空を蹴った。


「黒刃の名は断罪。この刃は、世界の終わりを望む者を許さぬ」


ギロティーナを振り抜くと、無数の影の刃が放射状に奔り、アリシアの結界を切り裂いていく。

制御室そのものが悲鳴をあげ、青白い光が乱流となって暴れ出した。


アリシアの笑みが一瞬だけ消える。

しかし次の刹那、彼女は狂気に燃える瞳で再び笑った。


「いいわ、アイゼン! あなたこそ、私の新世界の礎にふさわしい!」


二人の力が激突し、制御室全体が爆発的な衝撃波に揺れる。

パネルも、壁も、光もすべて吹き飛び、Λ-Nexus最奥はまるで宇宙空間に飲み込まれたかのような混沌と化した。


世界の終焉の戦いは、まだ始まったばかりだった。


アリシアが両腕を掲げた瞬間、制御球から奔出した青白い光が鎖の形を取り、空間そのものを縛り始めた。


「これが私の新たな武器グラビティ・チェイン……!」


鎖は空気ではなく“重力そのもの”で編まれていた。

触れた者の骨は粉砕され、金属ですら潰れてひしゃげる圧力。

数十本の光鎖が一斉にアイゼンへと襲いかかる。


バギンッ!!


その瞬間、アイゼンの身体は絡み取られ、四肢を拘束される。

漆黒の外套が軋み、骨が悲鳴をあげるほどの重力が押し潰す。


「ぐぬ……!」

ギロティーナを握る腕ですら軋み、影の力さえ鈍らせる。


アリシアの顔に勝利の笑みが浮かんだ。

「終わりよ、アイゼン! あなたも他の人間と同じ――重力の檻に囚われて潰えるだけ!」


鎖がさらに締め付けられ、制御室の空間が歪む。

床も壁も捻じれ、鉄骨が悲鳴を上げて潰れていく。

まるでこの場そのものが“圧殺”されようとしていた。


だが


「……断罪は、まだ終わらん」


低く呟いたアイゼンの瞳が、燃えるように紅く光った。

次の瞬間、ギロティーナの刃が黒炎を纏い、振動するように唸りを上げる。


ズゥゥゥンッ!!


刃先から奔出したのは影の奔流。

それはまるで幾千の黒翼が広がったかのように空間を覆い、迫り来る重力鎖に食らいついた。


「《断罪ノ刃〈ギロティーナ〉》――影絶ノ斬!」


ガキィィィィィィン!!


漆黒の斬撃が一閃。

青白く輝く重力の鎖は次々と断ち切られ、爆ぜるように霧散していった。


アリシアの笑みが凍り付く。

「な……私の《グラビティ・チェイン》を……!?」


アイゼンは拘束を解き放ち、闇の翼を広げて虚空に浮かぶ。

その姿は漆黒の断罪者――まるで宇宙そのものが人の形を取ったかのようだった。

「世界を縛る鎖も……狂気に酔ったお前の妄想も……この刃がすべて断ち切る!」


ギロティーナを振り下ろすと、闇と光が激突し、Λ-Nexus全体が震撼する。

外壁の装甲板が剥がれ、制御室の窓から地球の青が閃光のように覗いた。


アリシアは一歩も退かず、逆に歓喜の叫びをあげる。

「いいわアイゼン! その力……その狂気……私の新世界を築く礎として、存分にぶつけ合いましょう!!」


こうして、

最終幕の衝突が幕を開けるのだった。


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