フェーズ3 基地内部潜入・ゼログラビティ戦闘
ジャングルの奥の基地の隔壁が閉じると同時に、重力が消えた。
金属の床が天井へと裏返り、仲間たちの身体は宙へと放り出される。
銃弾や瓦礫が、まるで魚群のように漂いながら目の前を通過していった。
隔壁が閉じた瞬間、世界が裏返った。
「……おっと、来たな」
重力が完全に消え、仲間たちは金属の廊下ごと宙に投げ出された。
銃弾、瓦礫、血の滴までが浮遊し、異様な光景を作り出す。
「……最高だな。ゼログラビティ。ええ、僕が大嫌いな訓練項目ナンバー1が目の前に再現されるなんて、これ以上ない“歓迎”だ」
ジャスパーは皮肉を連発しながらも、実際は制御不能で回転中。
ラップトップが顔に直撃し、「このクソ鉄の塊、僕を殺す気かぁ!」と毒づく。
「どうせ僕は地に足がついた人生なんて送れないさ。物理的な意味で!」
「相変わらず口だけは元気ね」
セリーヌはスナイパーライフルを抱えたまま、壁を軽く蹴って推進。
完璧なフォームで姿勢を安定させ、余裕でスコープを覗く。
「ゼログラビティくらいで騒ぐなんて、ハッカーのくせに情けない」
彼女は漂ってきた銃弾を指先でつまみ、ジャスパーの額にちょんと当てる。
「ひゃっ!? 僕を殺す気!? ……ああ違った、もう死んでる気分だよ」
「若いのう」
アイゼン・ハワードはまるで玉座に座っているかのように脚を組んで浮遊。
杖を軽く突くだけで周囲の破片を“床”に吸いつけ、安定した足場を作り出していた。
「ゼログラビティなど、魔族の余興にすぎん。ワシにとっては昼寝の枕よ」
ジャスパーが鼻で笑う。
「いいですねぇ老人は。重力も年金も全部コントロール済みってわけか」
「チッ、やりにくいな!」
マルコは空中を強引に泳ぎながら、鉄骨を掴んで体を推進。
「だが慣れりゃ関係ねぇ!」
瓦礫を盾代わりに構え、迫り来る浮遊地雷を叩き落とす。
「こういうのは頭で考えるより先に、筋肉で解決だ!」
「脳筋の教科書だな……」
ジャスパーがぼそり。
「ハッハー! 俺の時代来た!」
アレックスは超高速移動スーツを稲妻のように稼働させ、ゼログラ空間を縦横無尽に駆け抜ける。
壁から壁へ、天井から床へ。
残像すら電光を帯び、まるで稲妻の三次元迷路を描いていた。
「重力なんかなくても、地面なんて俺が作る!」
敵兵の頭上に回り込み、一瞬で撃ち抜く。
「おおっと、マルコ!後ろのやつ取ったぞ!」
「余計なお世話だ!」
混乱して皮肉ばかり飛ばすジャスパー。
冷静に敵を狙撃するセリーヌ。
悠々と構えるアイゼン。
野性味で突っ走るマルコ。
雷光のように舞うアレックス。
ゼログラビティ戦は、彼らの個性を鮮明に浮かび上がらせていた。
サイキック親衛隊の襲撃
突如、基地の照明が赤く点滅し、無数の金属音が響き渡った。
「敵感知。ログラ仕様部隊、接近中!」
ジャスパーの端末が警告を告げる。
暗闇の通路から浮遊しながら現れたのは、アリシア親衛隊の精鋭。
ゼログラビティ専用に調整された“異能兵士”たちだった。
異能兵器の登場
重力反転兵
全身に黒い拘束具を纏い、手をかざすと“局所重力場”を生み出す。
味方の身体を天井や壁に叩きつけ、銃弾の軌道さえ曲げてしまう。
プラズマスピナー
両手に帯電リングを装着。回転しながら電撃を散布し、ゼログラ空間全体をイオン化。
漂う瓦礫や弾丸が帯電し、まるで雷の群れのように襲いかかる。
幻影投射兵
精神波をゼログラ空間に散布し、敵の視界に“偽の方向感覚”を与える。
上下左右の区別を狂わせ、仲間同士を衝突させる。
「……ああ、なるほど。ゼログラのカオスを、さらに三倍にしてくれるってわけか」
ジャスパーは皮肉を言いながら、端末を死守し必死に電磁障壁を展開。
「僕の胃袋が上下不明の方向で悲鳴をあげてるんだが!?」
セリーヌは即座に対応。
「幻影……視界を潰されても、音で狙えばいいだけ」
狙撃銃を逆さに構え、反射する音波を利用して正確に親衛隊を撃ち抜く。
一発ごとに敵の幻影が霧散し、実体が露わになった。
「クソッ、ややこしいトリックだな!」
マルコは鉄骨を蹴って推進し、敵の重力場に正面から突っ込む。
身体がねじれ、壁に叩きつけられる寸前。
「なめんなッ!」
全身をひねり、回転する瓦礫を掴んでシールド代わりに突撃。
そのまま敵兵を殴り飛ばし、重力場ごと粉砕する。
「おおっと、待ってましたぜ!」
アレックスはゼログラを最大限に利用。
超高速スーツで稲妻の軌跡を三次元に描き、まるで電光が基地内部を縦横無尽に走るように見える。
「ゼログラの迷路? 俺にとっちゃ遊園地さ!」
幻影兵を翻弄しながら三次元機動射撃で次々と撃破。
そして、アイゼン・ハワードが、静かに杖を構えた。
「……くだらんな」
次の瞬間、親衛隊の重力場が逆流し、敵兵自身が床へ叩き落とされる。
プラズマの稲妻も、彼の周囲だけは吸い込まれるように収束し、無力化された。
「ゼログラも重力も、儂にとってはただの玩具じゃ」
魔族のおっさんは薄笑いを浮かべながら、敵兵を次々と重力の渦に封じ込めていく。




