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【ランキング12位達成】 累計52万6千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:幽騎士城の夜想曲(ノクターン)』

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第12話 ネオ・クロノス社本社タワー電脳隔離区画

クロエとジャスパーは、メタ空間のような仮想端末に直結される。

次の瞬間、意識は光の奔流に吸い込まれ、彼らは“電脳空間”へと飛び込んだ。


そこは無限に広がる黒い盤面。

足元には白と黒の格子模様、まるで巨大なチェス盤。

空には数式とコードが星々のように瞬いていた。


その中央に現れたのは、ドクター・マクシミリアン。

白衣に身を包み、眼鏡の奥の瞳は冷たい光を放つ。

「ようこそ、私の盤上へ。ここで貴様らは“駒”にすぎん」


一手目


ジャスパーが指を走らせると、黒いナイトの駒が実体化し、光の軌跡を残して突撃した。

「先手必勝だ、博士!」


しかしマクシミリアンは指先を軽く払っただけで、銀色のビショップが現れ、ナイトを一瞬で粉砕した。

「短絡的だな。君はまだ“盤全体”を見ていない」


二手目


クロエは視線を鋭く走らせ、掌に光のクイーンを出現させた。

「……盤を読むのは私の役目。あなたの手筋、既に解析済みよ」

クイーンが斜めに走り、マクシミリアンの背後へ迫る。


だが次の瞬間、彼は笑った。

「解析? それは私が見せた“表の顔”にすぎん」


盤面のマス目が反転し、クロエのクイーンは消失。

代わりに彼女の背後に黒いルークが顕現し、エネルギー弾を撃ち込んでくる。


クロエは反射的に回避、唇をわずかに噛んだ。


三手目


盤面全体が巨大な回路となり、マクシミリアンの手が宙に描いた軌跡に合わせて駒が次々と展開する。

ビショップがコードの炎を撒き、ポーンが無数に複製され、ジャスパーとクロエを囲み始める。


「情報戦は戦場ではない。これは芸術だ。

 そして私は常に十手先を見ている」


四手目


ジャスパーが悔しげに叫ぶ。

「クソッ、十手先だと!? 俺はせいぜい三手先だ!」


クロエが冷たく言い放つ。

「だから私が七手読む。合わせて十手。互角よ」


二人の視線が交差する。

ジャスパーは即興でコードを組み、全ての駒を“データノイズ”で覆い隠した。

「ほらよ、あんたの視界を潰してやる!」


同時にクロエが静かに駒を置く。

ノイズの海の中から白いクイーンが再び浮かび上がり、マクシミリアンのキングへ


一直線に迫る。


クライマックス


マクシミリアンは初めて表情を動かした。

「……ほう」


彼は左手を掲げ、無数のポーンを自爆させてノイズを払う。

しかしその瞬間、ジャスパーの仕込んだバックドアが露出する。


「王手だ、博士!」

ジャスパーが叫び、クロエのクイーンがマクシミリアンのキングに突き立った。



光と衝撃が盤面全体を揺らす。


煙の向こうから、マクシミリアンの声が低く響いた。

「……悪くない。だが、勝利の一手を握るのは常に“黒”だ」


彼の姿はかき消え、盤面そのものが崩壊し始める。

ジャスパーは叫んだ。

「クロエ! 回線を切らないと巻き込まれる!」


クロエは最後に残ったコードを睨み、冷ややかに呟いた。

「マクシミリアン……必ず詰めてみせる」


二人の意識は現実へと引き戻され、電脳戦は幕を閉じた。



クロエとジャスパーの意識が現実へと戻った瞬間

警報がタワー全域に鳴り響いた。


〈警告:セキュリティ・プロトコル異常。自動防衛システム起動〉


壁に埋め込まれた赤いラインが一斉に発光し、

床下から鋼鉄のタレットがせり上がる。

天井からはドローン群が展開し、ガシャリと銃口を向けてきた。


ジャスパーが椅子から飛び起きて叫ぶ。

「やべぇ! あの野郎、電脳空間の敗北を“現実のトリガー”に仕込んでやがった!」


クロエは冷徹に腕時計型デバイスを操作しながら、

「……防御AIが暴走している。無差別射撃モードに移行。タワー内部ごと私たちを葬るつもりね」


銃火器が一斉に火を吹き、タワーのガラス窓が粉々に砕ける。

鉄と火花の嵐。


だがその瞬間、

風間 迅が壁を蹴り、無言で疾走。

彼の刀閃が青い弧を描き、迫るドローンを一瞬で四つ裂きにした。


続けざまにレオンが叫ぶ。

「避けろォッ!!!」

背中のランチャーから火柱が轟音とともに吹き出し、タレット群をまとめて爆砕する。

爆炎と衝撃でタワー内部が揺れた。


セリーヌは咄嗟に壁際へ飛び込み、狙撃銃を構える。

「ドローンの数……想定以上! 数百はいるわ!」

次々と撃ち抜かれる機体、しかしすぐに新たなドローンがハッチから吐き出される。


ドクターマクシミリアンの声


煙とノイズの中、スピーカー越しに低い声が響く。

「これが“黒の一手”だ、諸君。 勝負は盤上だけでは終わらん。

 現実こそ、最終盤だ」


クロエは鋭い瞳で天井を睨む。

「……やはり、彼は盤を二重に敷いていたのね」


ジャスパーが端末を叩きながら、額に汗を浮かべる。

「くそっ、このままじゃ防衛AIが暴走して、タワー全域が自爆プロトコルに入る! あと十五分!」


チームの再結集


銃火と爆炎の中、

セリーヌ、レオン、風間、クロエ、ジャスパーの5人が中央ホールに集まる。


そこへゆっくりと歩み出てきたのは


アリシア。


漆黒のコートを翻し、彼女の背後にはなお数体の親衛隊。

その瞳は、戦場の混沌さえ支配しているかのように冷たく輝いていた。


アイゼンが静かに前に進み出る。

「……アリシア。ここから先は、貴様と私の戦いだ」


アリシアは唇に微笑を浮かべ、囁くように答える。

「ようやく舞台は整ったわね。老魔族。あなたの手は、果たして私の“復讐の女王”に届くかしら?」


タワー内部は、火花と銃声、そして迫り来る決戦の気配に包まれていた。


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