第10話 ネオ・クロノス社本社タワー内部開戦
東京湾岸。
黒曜石の刃のように空を切り裂く摩天楼、ネオクロノス社本社タワー。
高さ800メートルを誇るその巨塔は、夜空を背に赤黒い光を帯びていた。外壁のラインが異界の脈動と共鳴し、建物全体が巨大な「生きた機械」のようにうねりを放っている。
その頂点には、世界を飲み込む「ラスト・コア」が脈動していた。
ヘリから降下したMI6特殊チームの6人が、タワーのエントランスを突破する。吹き抜けの大理石ホールに待ち構えていたのは黒装束に身を包んだアリシア親衛隊。
赤い瞳を光らせた異能兵士たちが一斉に武器を構える。
「来たか、MI6……。」
冷たい声と共に、戦端が開かれた。
レオン & セリーヌ & 風間 vs アリシア親衛隊
銃声が響き、セリーヌの銃弾が敵を薙ぎ払う。
その横で、風間 迅は一歩前に出る。
「……。」
彼は言葉を発さず、ただ刀を抜いた。
瞬間、疾風のように駆け抜け、親衛隊の前衛が一閃で崩れ落ちる。
もう一人が振りかざした斧は、風間の刀が弾き、返す刃で喉を断たれた。
斬撃は迷いなく、冷徹に、次々と敵を切り裂いていく。
「チッ……化け物じみた速さだな」セリーヌが息を吐きながらも、狙撃で援護射撃。
「前を任せる。後ろは私が掃除する!」
「ハッハァ! 待ってたぜ!」
レオンはミニガンを肩に担ぎ、轟音と共に火線をばらまく。
弾丸の嵐が壁をえぐり、突進してきた親衛隊の装甲を次々と破砕する。
だが親衛隊も並の兵士ではない。
弾丸を受けてもなお進み、腕から異界の衝撃波を放つ。
爆発がレオンを吹き飛ばすが、彼は豪快に笑って立ち上がる。
「効かねえなァ! もっと来いや!」
銃声と刀閃が交錯し、二人は背中合わせで親衛隊と死闘を繰り広げた。
風間の刀が音もなく相手の鎧を斬り裂き、派手な爆発と共に敵が倒れこむ。
セリーヌが身を捨てるように突き、回し蹴りがもう一体を粉砕。
親衛隊は数の利で押し寄せるが、セリーヌと風間は完璧な連携を見せ、次々と切り崩していく。
血と機械の火花が飛び散り、ホールは肉弾戦の悪夢と化していた。
クロエ&ジャスパー vs ドクター マクシミリアン(電脳空間)
同時に、ジャスパーがドローン制御パネルを奪い取り、仮想空間へのリンクを開く。
クロエは冷静にキーボードを叩き、遠隔ハッキング戦を開始する。
画面が変わり、二人は電脳空間の中へ引き込まれる。
青いデジタルの闘技場。中央にはドクター・マクシミリアンのモジュール化された意識が漂い、冷酷な顔が浮かぶ。
「DGSEの誇る優等生か。ここで消えろ。」
鋭く響く声と共に、サイバー攻撃が襲いかかる。
クロエの解析が光を放ち、ジャスパーの反撃コードが渦を巻く。
カオスと秩序の狭間で、彼らは一進一退の知的戦争を繰り広げる。
コードは火花となり、ホロディスプレイに映る二人の顔に緊張が浮かぶ。
赤黒いデータの奔流が牙のように迫り、ジャスパーが即座にコードを書き換える。
「……やらせるか!」
クロエは冷静に解析を開始し、データの罠を次々に無効化。
三人の頭脳と技術がぶつかり合う、壮絶なサイバー決戦が始まった。
アイゼン ハワードvs アリシア
最上階、円形の制御ホール。
赤黒い魔法陣の中心に、ラスト・コアが浮遊し、眩い光を放つ。
その前に立つのは──黒衣の女、アリシア・ヴァレンタイン。
紅い瞳を爛々と輝かせ、長い髪を揺らしながらアイゼンを迎えた。
「ようやくここまで来たわね、アイゼンハワード。」
「アリシア……その執念、もう終わらせる時だ。」
二人はゆっくりと歩み寄り、視線を交錯させる。
老練の魔族と、復讐に燃える女。
彼らの間に走るのは、歴史そのものを断ち切るような緊張。
アリシアの手が宙を舞うと、黒炎の剣が出現。
アイゼンは静かに魔力を解放し、闇色の障壁を纏う。
「これは私の復讐。そして、新しい秩序の誕生。」
「……ならば老魔族の誇りにかけて、その幻想を砕く。」
刹那。
二人の衝突が、ラスト・コアの光を揺るがせ、制御室全体を震わせた。
ついに6人全員が揃い、それぞれの宿敵との決戦が始まる。
ネオ・クロノス社本社タワーでの闘いによる世界の命運はこの戦いに託された。




