第9話 決戦 ネオ・クロノス本社
スフィアの暴走は収まらず、世界各地の都市は異界の軍勢に呑み込まれていた。炎と硝煙、悲鳴が交錯する戦場の中でそれぞれ仲間たちはそれぞれの前線に立っていた。
レオン・ガルシア 砂漠の砦
ドバイ近郊の要衝で、レオンはたった一人で前線を支えていた。
重火器の炸裂音が夜を切り裂き、異形の巨体を次々と吹き飛ばす。
「来やがれ、このクソ共!」
弾丸の雨が尽きても、彼は諦めなかった。
両腕に巻き付けたチェーンガンを振り回し、殴りつけ、血と火花で敵をなぎ払う。彼の咆哮は、戦場の混乱の中で仲間の士気を支える灯だった。
風間 迅 東京の地下
一方、東京の暗き地下鉄のりば。
風間は無数の怪物を前に、ただ静かに刀を構える。
言葉はない。ただ一振りごとに、影が舞い、敵の首が落ちる。
音もなく、鮮血すら風に溶けるように。
「……」
その剣は、異界兵器すらも両断した。
無表情の奥に秘めた決意。
“守る”という一点だけを胸に、迅は黙々と戦場を切り開いた。
その頃、MI6の地下審問室では、クロエ・ルノワールが冷たい視線を受けていた。「二重スパイの可能性がある」その烙印は、彼女を孤立させていた。
しかし、ジャスパーが証拠の偽装データを突き止めた瞬間、全てが逆転する。
「改竄されていた……真の裏切り者は、ドクターマクシミリアンだ!」
クロエの青い瞳が鋭く光る。
「……やはり彼が黒幕だったのね。」
長き疑念が消え、仲間たちの視線が彼女に戻る。
セリーヌは一瞬だけ視線を合わせ、小さく頷いた。
「戻ってきなさい、クロエ。あなたの居場所は、こっちよ。」
そして、全ての糸はひとつに集まる。
標的はネオ・クロノス社本社タワー。
世界を牛耳る巨大企業の牙城。
ガラスの摩天楼は夜空を突き抜け、塔全体が異界のエネルギーに蝕まれていた。
そこにこそ、“ラスト・コア”と復讐の女アリシア、そしてドクター・マクシミリアンが待つ。
ヘリの扉が開き、夜風が吹き込む。
都市を見下ろす赤と黒い壁。その中心に屹立する黒き巨塔。
「……いよいよだな。」
アイゼンが低く呟く。
クロエがタイトスーツを締め直し、冷徹に言葉を続ける。
「ここで終わらせる。世界を取り戻すために。」
セリーヌは銃を構え、真っ直ぐに前を見据える。
「アリシア……絶対に逃さない。」
ジャスパーの手元ではドローンが稼働し、無数のデータが走る。
「マクシミリアンの電脳領域は……俺が叩き潰す。」
そして風間とレオンは無言で武器を構え、ただ戦場を見据えていた。
夜空を裂き、アイゼンハワードを先頭に特殊異能チームはタワー入口へ降下する。そこに待ち受けるのは。アリシア親衛隊、電脳の怪物、そして宿命の敵。
クロエの疑惑は晴れ、6人の影が揃った。
世界を賭けた最終決戦が、今まさに幕を開けようとしていた。




