第9話 最期の記憶 ―騎士団の誓い―
霧深い古城の大広間。
赤い盾を掲げる亡霊騎士団が、無言のまま列を成す。
その鎧は冷たく光り、剣は鋭く空気を切る。
「……くっ、何度倒しても……!」
カズヤの剣が、幽霊の一体を斬り裂く。
しかしその瞬間、斬られた騎士は霧の中から再び立ち上がった。
「無限に……蘇るのか……」
アイゼンハワードは息を整えながら、低く呟く。
その表情には冷徹さと、かつての部下たちへの複雑な感情が混ざっていた。
カズヤの剣が震える。
その内部から、かつての騎士団長セリスの声が響いた。
霧が渦巻く大広間に、重苦しい沈黙が落ちていた。
赤い盾を掲げた亡霊騎士団が、無言で列を成す。
その瞳には憎悪も怨念もなく、ただ「果たされぬ誓い」だけが燃えていた。
アイゼンハワードは剣を構えながら、低く吐き捨てる。
「……まだ、我らに刃を向けるか」
亡霊たちが一歩前へ進む。
その動きは機械のように揃い、冷徹な戦意が空気を震わせた。
カズヤの手の中で剣が震える。
――否、剣そのものが語りかけていた。
『カズヤ……見るのだ。これが我らの最期の記憶』
視界が歪み、カズヤの意識は剣の奥深くへと引き込まれていった。
■■■セリスの過去の記憶 ― 最期の戦場
血に染まる石畳。
燃え落ちる城門。
絶望的な戦況の中、セリスと騎士団は最後の円陣を組んでいた。
「この城はもはや陥ちる。だが、封印だけは守らねばならん!」
セリスの声が響く。
仲間たちは互いに頷き合う。
恐怖はあった。悔恨もあった。
だが、彼らを突き動かしていたのはただ一つ――騎士団の誓い。
『我ら、赤き盾の名において誓う。
王を、民を、未来を護るため、我らが魂すら捧げん。』
その瞬間、血塗られた剣を石碑へと突き立て、
彼らは己が命と魂を封印の鍵とした。
赤い光が閃き、肉体は崩れ落ち、魂は鎖に縛られていく。
■■
意識が戻ると、カズヤの目の前で亡霊騎士たちは次々に立ち上がる。
斬っても斬っても蘇る彼らに、息を切らしながらもカズヤは剣を振るう。
「アイゼン!止める方法は……!」
「……落ち着け。焦るな、カズヤ。彼らは復讐ではない……守るもののために戦っている」
アイゼンハワードの声が低く響く。
剣と剣がぶつかり、鎧の衝撃音が大広間に鳴り響く。
幽霊騎士たちは何度も蘇り、まるで永遠に続く戦いのように二人を追い詰める。
しかしカズヤの心は揺るがない。
セリスの記憶と誓いが、戦う力と冷静さを与えていた。
「……僕たちが、最後まで戦う理由はわかっている」
亡霊騎士たちは叫ぶこともなく、ただ忠誠の炎に縛られ、戦い続ける。
カズヤとアイゼンは互いに視線を交わし、冷徹な戦意を胸に、立ち向かう。
その戦いの果てに、何が待っているのか。
運命の瞬間だった。




