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【ランキング12位達成】 累計53万7千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:幽騎士城の夜想曲(ノクターン)』

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第4話 オルド神父と地下聖堂の鍵

村の教会の奥。古びたステンドグラスから差し込む光が、長椅子を淡く照らしていた。

オルド神父は深くため息をつき、震える手で古びた銀の鍵を差し出した。


「……あなた方になら、渡すべきだろう」


「これは?」

カズヤが問いかける。


「地下聖堂へ通じる隠し通路の鍵だ。かつて私も騎士団に仕えていた……封印の存在を、誰よりも知っている」


神父の目には苦悩が宿っていた。

「亡霊たちは、怨霊ではない。彼らは誓いによって縛られ、この地に留まっている。封印が破られれば、村も城も、いや、世界が災いに飲まれるだろう」


アイゼンハワードは神父をじっと見据える。

「ならば、その誓いを辿るしかあるまいな。鍵を受け取ろう」


地下聖堂へ


夜、城へ戻った二人は、朽ちた廊下の奥に隠された石扉を見つけた。

オルド神父の鍵を差し込むと、低い軋み音と共に石が動き、冷たい風が吹き出す。地下へと続く階段は、闇そのもののように果てしなく深い。


降り立った空間には、古代の魔方陣が床一面に描かれていた。

中心には石碑があり、そこにびっしりと刻まれていたのは、騎士団の誓いの言葉だった。


カズヤは日記で見た文章を思い出しながら、石碑を指でなぞる。


「我らは血をもって契りを結ぶ。

裏切りと呼ばれようとも、忠誠のために剣を掲げ、

死してもなおこの城を護らん」


その瞬間、古剣が淡く光り、セリス団長の声が再びカズヤの胸を震わせる。


『……その言葉を、声にしてくれ。誓いはまだ果たされていない』


カズヤは息を呑み、石碑に刻まれた文言を唱える。

「我らは血をもって契りを結ぶ――」


石碑が共鳴するように低く鳴動し、魔方陣の一部が赤く灯る。

地を揺るがすような重い響きと共に、封印がわずかに解除された。


アイゼンハワードは険しい顔をした。

「……やはり、この封印は『誓い』そのものによって維持されている。

誓いを口にしたお前が、今度はその一部を解いたわけだ」


カズヤの胸に冷たい戦慄が走る。

「つまり、俺が……彼らの“誓い”を継いでしまった……?」


石碑の影から、鎧を纏った亡霊が一体、静かに姿を現した。

剣を抜き放つでもなく、ただ見守るように。

その瞳には、恐ろしさよりも切実な願いが宿っていた。


『我らの誓いを受け継ぐ者よ……封印の奥に潜むものを目覚めさせるな……』


低く、祈るような声。

しかし同時に、魔方陣の奥から不気味な気配が立ち上がる。

誰かが、あるいは何者かが、この封印を破ろうと暗躍している。


カズヤとアイゼンハワードは互いに目を合わせ、静かに剣とマントを構えた。

夜の迷宮は、さらに深い真実を飲み込んでいく。


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