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【ランキング12位達成】 累計53万7千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』

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第11話 絶体絶命の瞬間

ホール全体が低く唸るような振動に包まれた。

オメガ・スフィアの脈動が、まるで生きた心臓のように規則正しく、だが圧倒的な力で増幅されていく。


床に刻まれた古代文様が赤黒く光り、壁の紋章も静かに輝き出した。

その瞬間、空気が裂けるような音を伴い、拘束装置が一斉に展開した——


黒炎を纏った鎖が宙を舞い、タレットの腕が滑るように迫り、重力フィールドが周囲の空間を歪める。


「──っ!」


セリーヌの手が銃に伸びるが、衝撃とともに銃は床に叩き落とされた。

ジャスパーの端末は不可解な電流に包まれ、無慈悲にシャットダウン。画面は真っ黒になった。


アイゼンも逃れる間もなく、漆黒の鎖に絡め取られる。

三人は完全に拘束され、視界に映るのは、侵略者たちの冷たい笑みだけだった。


背後では、カイ・ラヴクラフトの声が静かに響く。

「君たちの戦いは、ここで終わる。」


ホール全体に、静かな絶望が広がった。


ジャスパーの端末が爆ぜ、セリーヌの銃が叩き落とされ、アイゼンの体には高圧電流が走る。


鋼鉄の檻が閉じ、三人は完全に捕縛された。

頭上のドローン群が赤いセンサーを光らせ、壁面のタレットは冷たい銃口を向けている。


カイ・ラヴクラフトが一歩前に出た。

「これで終わりだ。君たちがどれほど足掻こうと、時代の歯車は止められない。」


隣でアリシアが微笑む。

「MI6はいつもそう……正義だの忠誠だのに縛られて、自らの首を絞めるのよ。」


セリーヌは鉄格子に手をかけ、悔しげに叫んだ。

「アリシア! あなたはそれで満足なの? ただ勝者に取り入るだけの人生で!」


アリシアの瞳が一瞬揺らぐ。だがすぐに、氷のような笑みで覆い隠した。

「満足かどうかなんて関係ない。生き残った者だけが未来を手にするの。」


のときオメガスフィアが咆哮を上げた。


紫の閃光が空間を切り裂き、広間の床に古代文字が浮かび上がる。

轟音と共に、天井のスクリーンに地球外の光景が映し出された。


そこには異なる星。


無数の異星種族の艦隊が虚空に集結し、地球へと艦砲を向けていた。

オメガ・スフィアの起動は、侵略の号砲。

地球破滅へのカウントダウンは既に始まっていた。


ジャスパーの顔色が青ざめる。

「……あと300秒で、異星人たちとの門が完全に開く……!」


セリーヌが振り返る。

「アイゼン……どうするの!? このままじゃ……!」


アイゼンは静かに目を閉じた。

「……封じてきた。我が血に眠るものを。」


囁きのような声が、雷鳴を呼ぶ呪言へと変わる。


「目覚めよ、古き獣よ……闇よ、我が肉体を喰らい尽くせ。

 王の血よ、魔獣の骨よ! 真の姿へと具現せよ……」


檻の中で、赤い瞳が灼熱の光を放つ。


「《魔獣ライカントロス》ッ!!」


ズギャァァァァン!!!


雷が落ちた。

漆黒の稲妻がアイゼンを貫き、鉄格子を粉砕。

その体が裂け、衣は破れ、骨格は異形へと変貌していく。


全長三メートルを超す黒き巨躯。

牙は雷を纏い、爪は鋼をも断ち切る。

毛皮は嵐のように逆立ち、咆哮は広間を震わせた。


「グォォォォォォッ!!!」


檻もドローンも、圧倒的な暴威の前に一瞬で消し飛んだ。


セリーヌが息を呑む。

「……これが……アイゼンの本当の姿……!」


ジャスパーが震える声で呟いた。

「人間じゃない……神殺しの魔獣……!」


アリシアの瞳が鋭く光り、不敵に笑う。

「ふふ……やっと本性を現したわね。」


だがカイ・ラヴクラフトは一歩も退かず、冷ややかに応じる。

「面白い。ならば証明してみろ……その獣の力で、秩序を打ち砕けるかどうか。」


次の瞬間、広間は戦場と化した。


ライカントロスの爪が一閃、ドローン部隊をまとめて切り裂く。

セリーヌは空中でスーツを展開し、レーザーを回避しながらグレネードを投げ込む。

ジャスパーは制御盤をハッキングし、変異兵の動きを止める。


三人の連携が、再び火を吹いた。


しかし――オメガ・スフィアはカウントを止めない。

紫の光が増大し、異界の門が口を開き始める。


その時、黒炎と雷鳴をまとったライカントロスが、真っ向からカイに迫った。


「ラヴクラフト……決着の時だ!」


カイは静かに両腕を広げ、背後に黒き渦を呼び寄せる。

「来い、アイゼンハワード。お前の獣と、我が《ネブラ》の力――どちらが未来を創るか。」


二人が激突した瞬間、広間は光と闇で裂けた。


雷鳴、爆炎、咆哮、銃声。

スパイ映画の緊張感と、アクション映画の破壊的迫力が入り混じる最終決戦。


その渦中で、アリシアはなおも微笑んでいた。


仲間を撃つのか、救うのか。

裏切り者か、最後の切り札か。


彼女の銃口は、まだ定まっていなかった。


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