第5話 アリシアとの直接対決
地下研究施設。
疑似核を背にしたアリシア・ヴァルデスは、堂々と銃を構えた。
その瞳には一片の迷いもなく、冷たい光だけが宿っている。
「誤解しないで。私は最初からMI6の仲間じゃない。
あなたたちの敵、《ネブラ》の諜報員としてここにいるの。」
セリーヌの表情が固まる。
「……やっぱり。あなたを信用しなくて正解だった。」
アリシアは皮肉めいた笑みを浮かべ、軽やかに指で銃口を撫でた。
「でも“協力者を装う”っていうのは案外便利なのよ。情報も資材も、あなたたちの組織から散々吸い上げさせてもらった。」
無線のジャスパーが叫ぶ。
「おいおい、こりゃ完全に罠だったってわけか……!アイゼン、おっさん、どうすんだよ!」
セリーヌは怒りを抑えきれず、トリガーに指をかける。
「話は終わり。あとは力でねじ伏せるしかない。」
しかしアイゼンは一歩だけ前に出て、赤い瞳でアリシアを見据えた。
「……まだ情報を引き出せる。彼女の口から語らせろ。」
その一言に、セリーヌは歯を食いしばる。
「あなた、甘いわよ。敵に情けをかけてる暇はない!」
緊張がチームの空気を裂く。
《ネブラ》の首魁、カイ・ラヴクラフト
その時。轟音とともに天井が崩れ、闇を纏う巨影が姿を現した。
長身の男。灰色の肌、蒼白の瞳。
外套を広げると、その背後から異形の兵士たちが湧き出す。
「アリシア、ご苦労だった。」
その声は低く、雷鳴のように重い。
彼の名は カイ・ラヴクラフト。
異界組織を率いる冷酷無比の支配者だった。
影の兵士たちが武器を構え、地下施設は一瞬にして戦場と化す。
戦闘の幕開け
アリシアはカイの隣に立ち、冷ややかにアイゼンたちを見下ろす。
「あなたたちの役目はここまで。ラストコアは、ネブラがいただく。」
セリーヌが鋭く銃を構える。
「……私たちを舐めないことね。」
マントを翻したアイゼンの漆黒の炎が広間を包み、セリーヌの弾丸が閃光のように走る。
対するカイは片腕で衝撃波を生み出し、兵士たちが一斉に襲い掛かる。
こうしてアリシア=敵の工作員という真実と、《ネブラ》の首魁カイの登場によって、物語は一気に戦争の局面へと突入した。
瓦礫と警報が響く地下研究施設。
カイ・ラヴクラフトの一撃は空間を震わせ、壁に亀裂を走らせた。
アリシアが隣に立ち、挑発的に笑う。
「見ての通りよ。私はネブラと共に新秩序を築く。
あなたたちMI6は、時代のゴミ箱に捨てられる運命。」
セリーヌは銃を構え、緑の瞳に怒りを宿す。
「秩序?それは支配の言い換えに過ぎない!」
アイゼンは一歩前に進み、ワインレッドのマントを翻した。
赤い瞳が闇を貫く。
「……ならば、ここで止めるまでだ。」
地下の乱戦 轟音。
セリーヌの弾丸が閃光を描き、アイゼンの漆黒の炎が走る。
しかしカイは片手でその全てを受け止めた。
「弱いな。伝説の魔族と呼ばれても、その程度か。」
背後の暗がりから黒い戦闘スーツ部隊が雪崩れ込み、銃火と閃光弾が地下を埋め尽くす。
「撤退だ!」
アイゼンの低い声が響き、セリーヌは即座にラストコアを抱え直した。




