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【ランキング12位達成】 累計53万7千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』

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第3話 寝返りの美女

序幕 ローマの夜


古代遺跡と近代都市が入り混じる街で、不穏な情報が流れ込んできた。

国際指名手配リスト。その最上位に「アリシア」の名が浮かぶ。

かつて複数の諜報機関を翻弄し、核兵器級の機密情報を盗み去った女。


MI6本部からの緊急通達が三人に届いた。

「アリシア・ヴァレンタイン。対象はオメガ・スフィアとの関連が疑われる。

捕獲、もしくは排除を許可する。」


夜の石畳の広場。

アイゼンハワードが赤い瞳で周囲を探ると、群衆の中でひときわ異彩を放つ女性の姿を見つけた。

長い黒髪、冷ややかに光る瞳、そして人混みを抜ける優雅な足取り。


アリシアだった。


挿絵(By みてみん)


彼女はまるで舞台女優のように微笑み、わざと三人に視線を向けてきた。

その瞬間、群衆が不自然にざわめき、無数のバイクと黒塗りSUVが広場に雪崩れ込む。


「くそっ、待ち伏せか!」

ジャスパーがバッグから奇妙な装置を取り出し、即席の電磁波ジャマーを展開する。

だがアリシアは煙のように群衆に紛れ、次の瞬間には黒い車両の後部座席に消えていた。



セリーヌが戦闘スーツのゴーグルを下ろし、操縦席に飛び込む。

「アイゼン、ジャスパー! 掴まって!」


MI6特務課が極秘開発したコンバットカーが咆哮し、タイヤが石畳を焦がす。

車体が変形し、車輪の一部がマグレブ式のホバリングモードに切り替わる。

紫の夜景を切り裂き、セリーヌは猛スピードで逃走車両を追跡した。


敵車両の後部座席、アリシアが窓越しにちらりと振り返る。

その笑みは挑発的で、まるで「捕まえてごらんなさい」と語っていた。


ジャスパーの発明品「吸引式人間キャッチャー」が放たれ、敵車両を絡め取ろうとする。だがアリシアはわずかなタイミングで運転手に指示を飛ばし、急旋回によって装置を振り切った。


ようやく逃走車両を囲み込んだ瞬間、アリシアは後部座席から立ち上がり、銃を構える。

その瞳には冷たい光。

セリーヌが息を呑む。

「……本当に私たちの敵、なの?」


アリシアは応える代わりに、夜風に髪を靡かせながら囁いた。

「敵でも味方でもないわ。私は“終末”の側に立つ者よ。」


直後、閃光弾が炸裂。

広場全体が真白に覆われ、彼女の姿は霧散する。


残されたのは破壊された車両と、謎めいたカード

そこにはオメガ・スフィアと酷似した紫の紋様が刻まれていた。


セリーヌは拳を握りしめる。

「彼女と手を組むなんて……ありえない!」


ジャスパーは顎に指を当て、にやけ顔を崩さない。

「だがな、アリシアはスフィアの正体に一番近い。利用できるなら利用すべきだろ?」


アイゼンハワードはマントを翻し、夜空を見上げる。

「……裏切りの匂いしかしない。だが、あの女は“終焉の鍵”だ。次に出会った時、答えを引きずり出す。」


ローマの闇の中、アリシアは別の高台から三人を見下ろしていた。

その手には、紫黒に脈打つ小さな結晶。オメガ・スフィアの欠片。

彼女の唇が冷たい笑みを描く。


「終焉は、必ず訪れるわ。

……でもその瞬間まで、少し遊んであげる。」


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