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【ランキング12位達成】 累計57万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』

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【最終話】 列車の霧が薄れた終点駅

突然、ハセガワは身を翻し、抱えた禁忌品を胸に飛び上がる。

「まだ終わりじゃない!」

その声と共に、彼は車両の通路を駆け抜け、霧の中へ姿を消そうとする。


乗客たちは咄嗟に反応する。サエキは静かに飛び退き、タカハシは思わず声を上げ、マツイは観察眼を光らせる。 だが、アイゼンは一歩も動じない。魔族ならではの冷静さで、霧と魔力の揺らぎを読み切っていた。


「そこで止まれ!」

アイゼンの声と同時に、数瞬で列車の通路を飛び越え、ハセガワの進路を塞ぐ。 ハセガワは驚きの表情を浮かべ、禁忌品を抱えたままバランスを崩す。



アイゼンは華麗に間合いを詰め、片手で禁忌品を押さえつけると、もう片方の手でハセガワの腕を確実に捕まえた。


「逃げる場所はもうない」


「……さすがです、アイゼンさん」

タカダはベテランの落ち着きで冷静に周囲を観察し、ササキは胸を撫で下ろす。 マツイは微笑を浮かべながら、静かに書き留める。


「すべてが繋がった……」

カズヤは短くまとめる。

「凶器の粉砕、血文字の偽装、魔界結界の時間の歪み、オチアイの忠誠……すべてがこの瞬間のためにあった」


ハセガワは抵抗するも、アイゼンの 確実な動きの前に抗うことはできず、やがて肩を落とす。 列車の霧が薄れ、窓の外に静かな夜景が広がる。


終点駅のプラットフォームには、緊張と安堵が入り混じった空気が漂う。


「これで、すべて終わりだ」

アイゼンが低く呟き、カズヤと視線を交わ

す。


終点駅のプラットフォームに降り立った乗客たちは、安堵と疲労、そして微かな喪失感が入り混じった表情をしていた。

ハセガワは手錠をかけられ、禁忌品を押さえられたまま警備員に引き渡される。その背中には、かつての陽気さの影もなく、ただ沈黙と後悔が漂う。


カズヤはふと、オチアイの姿を思い浮かべる。彼の死によって、この列車内での事件はより深い意味を持つことになった。

「あなたの死は、無駄にはしない…」

カズヤの声は小さく、しかし決意を帯びていた。


アイゼンはハセガワの手を押さえたまま、周囲を見渡す。

「皆、よく耐えた。だが、魔界結界の影はまだ完全に消えたわけではない」

その言葉に、乗客たちは自然と互いの顔を見合う。フジワラは警戒を緩めず、サエキは静かに歩み寄るが、表情に微かな緊張を残す。


すぐに列車内での事件は報道機関によって取り上げられた。

「魔導鉄道で不可解な殺人事件!乗客の協力により犯人逮捕!」

ニュースキャスターの声がプラットフォームに響く中、乗客たちは微妙な表情で報道を聞いていた。


タカハシは思わず、「まさか禁忌品まで絡んでいたとは…」と小声で呟き、サエキは冷静にニュースを受け流す。

マツイはペンを走らせ、事件の全貌を自分なりに整理していた。


アイゼンはふと、プラットフォームの暗がりに目を向ける。

「しかし、魔界結界の奥に残された禁忌品、そしてあの霧の向こうに潜む“気配”……完全に終わったわけではない。我々が片付けたのは、この事件の一部に過ぎない」


カズヤは小さく息をつき、拳を握る。

「つまり、次がある、ということだな」


アイゼンは微かに笑みを浮かべる。

「次の事件も、また霧の中で我々を待っているだろう……だが、心配はいらない。我々は準備はできている」


列車の霧がゆっくりと薄れ、遠くに終点駅の灯りが揺れる。

その光の向こうに、まだ見ぬ冒険と新たな謎が静かに息づいている。


カズヤとアイゼンは互いに視線を交わし、次なる事件の決意を胸に、列車を降りる。



『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』




ー完ー






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