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【ランキング12位達成】 累計56万6千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』

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第7話 貨物車両の秘密

夜の魔導鉄道《レム=エクスプレス》は、不気味なまでに静まり返っていた。


だがその沈黙の奥には、密やかな囁きと、互いに疑念を向ける視線が渦巻いている。


貨物車両の扉の前に立つカズヤとアイゼン。

扉の鍵穴は壊され、わずかに金属片が床に散っていた。

侵入の痕跡は明らかだった。


複雑に絡む人間模様


調査を続ける中で、乗客たちの証言がさらに矛盾を孕んでいることが浮かび上がった。


「貨物車両に誰が近づいたのか……私の知る限り、そんな者はいません」

オノデラは冷ややかに言い切った。だが、その視線は一瞬だけワタナベをかすめた。


「いや、僕は見たんだ。夜中に影のように誰かが歩いていた。たしか……帽子を深くかぶっていたはずだ」

タカハシが落ち着きなく語る。だが彼の証言は抽象的で、実態を掴ませない。


サエキ(寡黙な旅客)は沈黙を守り、窓の外の闇をじっと見つめていた。

その姿に、カズヤは微かな違和感を覚える。まるで彼女は何かを隠すために、自ら存在感を消しているかのようだった。


アイゼンがゆっくりと立ち上がり、乗客たちを順に見渡した。

その赤い瞳は、影の奥底まで抉るように光る。


「嘘は、言葉よりも沈黙の中に潜む」


静かな声で放たれた言葉に、乗客たちは思わず身じろぎした。


「君たちの誰もが、表向きには事件に関わっていないと言う。だが――その中で『誰かを庇っている者』と『自分を隠している者』がいる」


オチアイ(コック)

が一瞬だけ顔を曇らせたが、すぐに柔らかな笑みに戻した。

その小さな揺らぎを、アイゼンの眼差しは見逃さない。


カズヤは、散らばった証言と現場の痕跡をノートに書き込み、繋ぎ合わせていく。


「貨物車両の扉は壊されていた。けど……開け閉めの痕跡が微妙に不自然だ」

彼は指で鍵穴の周囲をなぞり、金属の削れ具合を確かめる。


「最初に壊されたあと、一度だけ“誰かが内部から丁寧に閉め直した”……そんな痕跡が残ってる」


つまり、侵入者は外から入っただけでなく、中で何かを済ませたあと“証拠を隠すために整えた”のだ。


その冷静な手際が、余計に不気味さを漂わせた。


貨物車両の奥から漂うのは、香辛料と油の匂い……しかし、それに混じっていた。

焦げた鉄と、魔力が溶け出したような刺す臭気。


「禁忌の魔道具……ここに隠されている」

アイゼンは低く呟き、扉に手を当てた。


「だが、この臭気は……すでに一度、誰かが触れた痕跡だ」

カズヤは思わず唾を飲み込む。


「犯人は、凶器を隠すだけじゃなく……この魔道具も狙ってる?」

謎は深まる


その時、ワタナベ(財団)が声を荒げた。

「そんな馬鹿な! この列車に積まれる貨物は厳重に管理されている。財団の承認なしに触れることはできん!」


だがその目はどこか泳いでおり、彼自身もまた貨物の中身を把握しているのではと疑わせる。


サエキが小さく囁いた。

「……誰もが関係ないと言い張る。けれど、真相の鍵は全員が少しずつ握っている」


その言葉に、アイゼンの瞳が鋭さを増す。

そしてカズヤは、ノートに太い線を引いた。


「……わかってきた。犯人は“時間のずれ”を利用して動いている」


凶器の消失、証言の矛盾、貨物車両の侵入痕跡。

すべてを繋ぐのは、この《レム=エクスプレス》が通過した“魔界結界”の影響だった。


貨物車両の奥に続く闇を前に、カズヤとアイゼンは視線を交わした。

その向こうには禁忌の魔道具、そして真相へ通じる秘密がある。


だが同時に、そこには新たな死が潜んでいるかもしれなかった。



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