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第一話 滅びた王国

(リスク)たち冒険者パーティーがこの地を踏んだとき、

メゾポタミア王国はすでに焦土した建物の瓦礫と灰の山と化していた。


あのかつて人類の英知を集めてた建物が立ち並び、星の導きを信じる神官たちが栄華を誇った都。

そこは今、魔物たちの巣窟と化していた。


「どうなってんだ。あのメゾポタミア王国が、がれきの山だぜ」


数か月前。


メゾポタミア王国は、歴代の中でも最も平和で豊かな時代を迎えていた。

空は澄み、貴族も民も等しく芸術と知恵を楽しみ、

王城の黄金の尖塔は、朝日を受けて世界に誇る輝きを放っていた。


その日、魔王軍の一角、闇の司祭カザールが王に謁見するために呼ばれていた。


挿絵(By みてみん)


王の声は慎重に、しかしやや苛立ちを含んでいた。


「勇者アルベルトの活躍は聞いておるな? 魔王四天王の一人、堕天使アザリエルが討たれたそうじゃ」


カザールは口元を歪め、冷たく笑った。


「あれは四天王の中でも最も弱き者。我らの“主”の力を語るには値しませんな」


「だが、魔王軍には大打撃であろう」


「して、今日の御用は?」


王は立ち上がり、やや語気を強めた。


「前の戦いでの賠償金の莫大な資金。そろそろ、納めている額を見直してもらおうと思ってな」


その言葉に、カザールの目が細くなる。


「……弱った隙を見て、足元を見るつもりですかな? 舐められたものですなぁ」


王の側近が一歩踏み出し、冷静に言い放つ。


「ここにそろいしは、我が王国屈指のインペリアルガードの精鋭部隊。貴様もその力、知っておろう」


しかし、カザールは肩をすくめた。


「ええ、もちろん知ってますとも――」


「今から"踏みつぶされる"人間のことですよね?」


「この……! 我らを愚弄するか!」

「なんだと貴様!!」

「無礼な、この者を許してはなりません。」


衛兵たちが一斉に剣を抜いたそのとき、

カザールは杖を掲げ、黒い煙をまとわせながら、静かに詠唱を始めた。


【禁術詠唱】

《ト・バール・メギド・ヴァッサラ……》

《時の彼方よりその名を呼ばん》

《封ぜられし巨なる者よ、契約のもとに姿を顕せ……!》


「出でよ、失われし――」

「《鉄壁の巨人ゴルザン》!!」


轟音とともに城の床が裂け、

黒き魔方陣が唸りを上げて回転を始める。

そしてその中心より、高さ10メートルを超える巨体が現れた。


挿絵(By みてみん)


黒鉄のように硬化した肌が月光を受けて鈍く輝き、

赤く光る目が王と兵たちを見下ろす。


「な、なんじゃこれは……!!」


「王よ……我々を魔族を……見くびらないでいただきたいですなぁ」


ゴルザンが一歩踏み出すたびに、大理石の床が砕け、

王宮の天井が崩れ、柱が折れ、火花が舞い散る。


インペリアルガードは勇敢に立ち向かうも、

その拳ひとつで薙ぎ払われ、盾は木の葉のように砕け散る。


王は震える手で剣を抜き、最後の力で立ち上がる。


「……これが……貴様の、忠義か……」


カザールは冷たく告げた。


「忠義? いいえ。これは粛清です。世界を正す闇の神の意志ですなぁ」


そしてその夜


メゾポタミア王国は燃え、崩れ、

人々は消え去り、ただ魔物と黒い霧だけが残った。


数か月後


リスクたちが訪れたとき、かつての繁栄の跡は見る影もなく、

王城は巨大な拳の跡を残して崩壊していた。


「これが……かつて繁栄の都と呼ばれた場所か……」


彼らの前に広がるのは、巨大な足跡、崩れた石柱、

そして血と灰の臭いが染みついた死の都であった。


物語はここから、リスクたちの新たな戦いへと移っていくのだった。

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