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【ランキング12位達成】 累計56万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:魔導列車殺人事件 〜列車内で消えた凶器〜』

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第3話 不自然な証言

「では、皆さんの話を伺いましょうか」

アイゼンハワードの赤い瞳が、個室に並んだ乗客たちを順に見渡した。

吊りランプの灯りが淡く揺れ、重苦しい沈黙が漂う。


カズヤはペンを持ち、ノートを広げる。

「富豪令嬢フジワラ美咲が殺されたとき。魔界の国境の結界通過中だったあの時間帯、皆さんはどこにいたんです?」


マツイ(芸術家)

「私は食堂車にいました。霧に包まれる窓の景色を描いていて……」

そう言って胸を張るが、カズヤの目は鋭かった。


「ですが、スケッチブックは今ここに持ってきてませんね」

「えっ……? 部屋に置いてきただけです!」


視線が泳いだ。

“観察眼が鋭い”はずの芸術家が、なぜか説明に詰まっている。


ハセガワ(冒険家)


「俺はデッキに出てたよ! 結界の霧の中で風を浴びるなんて、なかなかできねぇだろ?」


「証人は?」カズヤが尋ねる。


「……残念ながら俺だけだ」


アイゼンが口角を吊り上げた。

「ほう。魔界結界通過中に外に出るとは……よほど命知らずか、あるいは――」

ハセガワは笑ってごまかしたが、額にうっすら汗が滲んでいた。


オチアイ(コック)

「ぼ、僕は……厨房にいました。ええ、キタムラ車掌さんと一緒に」


アイゼンが目を細める。

「……キタムラ。あなたも厨房に?」


キタムラ(車掌)


車掌は姿勢を正したが、その声はどこか震えていた。

「え、ええ……確かに厨房に……ほんの少し、顔を出した程度ですが……」


「つまり、オチアイと一緒にいた?」カズヤが食い下がる。


「……はい」


しかし、その瞬間、タカハシ研究者が口を挟んだ。


「いやいや、私は見たぞ? キタムラさん、あの時は廊下を歩いていたはずだ」


「な……?」

キタムラの顔色が変わる。


「研究者タカハシの証言」と「オチアイ&キタムラの証言」が矛盾を見せた。


タカハシ(研究者)


「私はね、結界の効果を観察していたんだ。人間界と魔界の境目で、認識に乱れが生じるはずだから……」

早口でまくしたてるが、どこか得意げで、余計なことまで話そうとする。


「たとえば、あの冒険家の行動も本当に正しかったかどうか、保証はない!」


彼の発言は、場の不信感をさらに煽った。


サエキ(若手ウェイター)


「……私は、廊下の窓辺にいました」


それだけを言い、静かに口を閉ざす。

誰も彼女に突っ込めない。淡い存在感が、逆に不気味だった。


オノデラ(研究者)


「私は読書をしていました。魔界言語の古文書を。……目撃者はいませんが、これは事実です」

感情の揺れはなく、逆に冷たすぎる証言に、場が凍る。


ワタナベ(財団関係者)


「私は談話室で。……情報収集をしていた。

もっとも、あなた方にそれを証明する気はないが」

計算高い笑みを浮かべ、逆に挑発的だ。


イトウ(元軍人)


「……個室にいた」

それだけ言って口を閉ざした。

鋭い目つきに、誰も追及できなかった。


タカダ(ベテランウェイトレス)


ベテランのタカダは落ち着き払って言う。

「私はずっとサロンに。……紅茶を運んでいたのを見た人もいるはず」


若いササキは緊張で声を震わせた。

「ぼ、僕は……ワゴンで……飲み物を……」


その証言は曖昧で、誰も信じきれない。


■■


アイゼンは一息つき、カズヤのノートを覗き込んだ。

「ふむ。全員、証言に揺らぎがあるな。特に……」


沈黙。


アイゼンがまとめに入る。

「今の証言で明らかなのは三つ。

一、魔界の結界通過で時刻の認知が乱れている。ゆえに“○時○分にどこ”という主張は信用度が落ちる。

二、キタムラの“厨房立ち寄り”は事実だが、犯行直前とは限らない――記憶の曖昧さがある。

三、オチアイの『ずっと一緒にいた』は過剰。彼一人が“断言”でアリバイを固定しに来ている」


カズヤが低く言葉を継ぐ。

「“嘘”と“記憶違い”は違う。嘘には目的がある。

ここで目的が見えるのは、自分の滞在を“長く見せたい”人間だ」


ランプの炎がぱち、と音を立てる。

オチアイの表情に、一瞬だけ影。


キタムラは眉間に皺を寄せて、慎重に言葉を選ぶ。

「……私が覚えているのは、“見回りの途中で厨房をのぞいた”という事実だけです。オチアイ君、私が“ずっといた”はずはない。君がそう“感じた”のなら、君の時計のほうが狂っていたのかもしれない」


アイゼンが結論を留める。

「よろしい。嘘を断定するのではなく、時刻の揺らぎを“補正”していこう。

次は物的証拠だ。見つかりやす過ぎる場所に、誰かが“置いた”痕跡があるはずだ」


列車は霧を巻き上げ、深い夜を走る。

“嘘”はまだ姿を隠したままだが、嘘と記憶違いの境界線が、今、くっきりと描かれ始めている。




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