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【ランキング12位達成】 累計54万4千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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【最終話】 影の諜報員

《アレクシス》の心臓部が爆裂し、巨兵が絶叫を上げながら崩れ落ちる。

要塞全体が炎に包まれ、砂嵐の中へ沈んでいった。


焦げた鉄骨と砂塵の中

リディアは血に濡れたまま、アイゼンの胸元に横たわっていた。


「私は……おっさんを……信じたわ」

かすれた声。

瞳はかろうじて開いているが、その光は今にも消えそうだ。


「喋るな! 今助ける!」

アイゼンは叫び、彼女を強く抱きかかえる。

セリーヌも片膝をつきながら「早く……病院へ……」と声を絞る。


ジャスパーの声が無線を突き破る。

「近くに脱出用のヘリを回す! 生きて帰るぞ!」


アイゼンはリディアの血で濡れた手を握りしめ、砂嵐を突き進んだ。

瓦礫が崩れ、爆炎が吹き荒れる中、彼の赤い瞳はただ一つの願いで燃えていた。


死なせは、しない。


ドバイの緊急病院、深夜。

モニターの電子音が静かに鳴り続ける。


手術室のランプが消え、医師が白衣を翻して出てくる。

アイゼンは壁にもたれて座り込む。隣では包帯を巻かれたセリーヌが静かに微笑み、ジャスパーは深く息を吐いた。


アイゼンはガラス越しに眠るリディアを見つめ、低く呟く。

「まだ……終わっちゃいない」


外では砂嵐が夜を覆い隠していた。



■■■



アレクシス財団の中枢が崩壊し、世界を揺るがす異能兵器ネットワークは停止した。黒幕の陰謀は潰え、国際社会にその真相が暴かれる。


ロンドン。


霧に煙るテムズ川を背に、アイゼンハワード・ベルデ・シュトラウスは歩いていた。

黒のスーツに身を包み、かつて失ったはずのIDカードを再び胸に下げる。


MI6への復帰。

それは彼にとって名誉であり、同時に鎖でもあった。


リディアは病院で眠っている。

ジャスパーは情報部門へ、セリーヌは狙撃班へ復帰し、それぞれ新しい任務に就いた。

仲間たちは散っていく。

だが、彼にとって戦場は終わらない。


その夜。

アイゼンはロンドンの片隅にある小さなバーで、赤いワインをグラスに注いだ。

窓の外、雨が石畳を濡らし、街灯が滲んで見える。


グラスを傾け、深く吐息を漏らす。

「……おっさんは今日もつらいよ」


苦く、そしてどこか諦めにも似た笑み。

諜報員としての影の人生に戻った彼は、誰に讃えられることもなく、ただ闇の中に立ち続ける。


画面は静かにフェードアウトし、

遠くにビッグ・ベンの鐘が鳴り響く。



ドバイ病院の一室。

リディアは白いシーツに横たわり、管につながれて眠る。

だが、監視カメラが寄ると


瞼がわずかに動いた。

微かな呼吸に、かすかな生気が戻りつつある。


砂嵐を超え、死の淵をくぐり抜けた彼女の瞳が、ゆっくりと世界を取り戻す兆しを示す。




『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ12ー消されたMI6と魔族のおっさん』



ー完ー






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