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【ランキング12位達成】 累計57万5千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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第3話 逃亡者たち

地下鉄構内。構内放送の女性の声が響くなか、黒い戦闘服のロシア秘密警察が一斉に飛び込んできた。


銃口が赤い瞳の魔族を狙う。

「……やれやれ、またわし一人に隊列を向けるとは。人気者はつらいもんじゃ」


アイゼンハワードはマントを翻すと、きらめく仕草で手を上げる。

次の瞬間、床に刻んだ小さな魔法陣が爆ぜ、閃光が構内を焼いた。

ロシア兵士たちが一瞬目を潰され、銃声が乱射される。


アイゼンは貴族の舞踏のようなステップで身をひらりとかわし、敵兵の銃をマントで絡め取って地面に叩きつけた。

続けざまに、柱を蹴って宙返り赤い瞳が閃き、拳が兵士の顎を砕く。


だが数が多すぎた。


地下鉄のプラットホームの両側から、さらに増援が押し寄せる。

背後は線路、前方は銃列。


「おっと……これは、どうにも“チェックメイト”かのう」

額に汗がにじむ。471歳の魔族といえど、今の身体は人間でいえば初老。息は上がり、膝もわずかに悲鳴を上げている。


銃口が一斉に火を噴いた。


アイゼンは飛び込むように地下鉄の車両へ。

列車が動き出し、彼は屋根にしがみつく。だが、その屋根の上にも既に数人の秘密警察が待ち構えていた。


風を切り裂く銃声。火花が散る。


アイゼンは片手でマントをはためかせ、もう片手で兵士の襟首を掴むと、そのまま線路へ投げ落とす。

だが、背後から押さえ込まれ。膝蹴りを受け、よろめく。


「……471年生きても、やはり膝は弱点じゃな……!」

アイゼンが呻いたその瞬間、兵士の銃床が彼の後頭部を打ち据える。視界が白く弾ける。


ついに、彼は地面に叩き伏せられ、銃口が額に突きつけられた。


「終わりだ、クソ魔族」

兵士の冷たい声が夜風に溶ける。





その時、頭上から奇妙な機械音が鳴った。

「ボフンッ!」

という間抜けな音とともに、何かが兵士の頭に吸い付き、彼ごと屋根の外へ引きずり落とす。


「な、なんじゃ!?」

アイゼンが目を剥くと、隣の列車に並走する黒塗りのバン。窓から、寝不足顔の男が顔を出していた。


挿絵(By みてみん)


「よぉ、ご老体。間一髪、ジャスパー・クロウリー様の“吸引式人間キャッチャー”のお出ましだ!」

小柄で痩せた男。眼鏡の奥は隈だらけだが、にやけ顔は自信満々。

肩から工具入りバッグをぶら下げ、発明品を操作している。


「……発明のネーミングセンスが絶望的じゃな」


「黙れ。奇抜さは正義だ。実用性は二の次」


「お主の人生設計そのものじゃな……」



挿絵(By みてみん)


続いて運転席から声が飛ぶ。

「アイゼンさん! 早く飛び移って!」

栗色の髪をポニーテールに束ね、緑の瞳を光らせるMI6若きエージェント。セリーヌ・ハートマン。


戦闘スーツ姿でハンドルを操る姿は真剣そのもの。


「いや、わしはおっさんだぞ」


「イケおじです!」


「お主ら、どうしてわしの老いを美化するんじゃ……」


最後の力で跳躍し、アイゼンはバンの中へ飛び込む。

直後、列車の屋根は銃撃で穴だらけになり、火花が散った。


バンは急加速。銃弾を浴びながらも闇に紛れ、三人の逃亡劇が始まる。

「……わしはまた濡れ衣を着せられ、国家に捨てられ、そして今は“人間キャッチャー”で拾われる……」


「ありがたく思え、おっさん」


「はい! 私たちがついてます!」


471歳の魔族のおっさんと、二人の相棒。

世界を敵に回した逃亡劇が、いま幕を開ける。


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