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【ランキング12位達成】 累計55万3千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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第9話 復讐の告白

廃墟ホテルの長い廊下。外は嵐で窓が震え、吹き込む風が古いカーテンを揺らしていた。


暗がりの中、無口な運転手ルネが立っていた。彼の影がランプの明かりに揺れ、不気味に伸びる。


「ルネさん……」


カズヤが声をかけると、彼はふっと笑った。


「……どこで俺だとわかった?」


その一言に、全員の背筋が凍りついた。


アイゼンハワードが帽子を押し上げ、低く答える。

「殺し方じゃよ。ジャンヌもマリアも、手際が妙に整いすぎておった」


「……?」クラリスが息を呑む。


 カズヤが言葉を継ぐ。

「切断面は鋸でもナイフでもない。解体を熟知した者の動きだ。しかも、関節を外して効率的に分けている。素人にできる仕事じゃない」


アイゼンハワードは頷き、さらに言葉を重ねた。

「血文字もそうだ。あれほど冷静に、あの惨状の中で文字を残す……心霊現象のように見せかけながら、実は冷酷に計算されておる」


「つまり……」

カズヤが指を突きつけた。


「犯人は、ただの偶発的な狂気じゃない。兵士か、訓練を受けた者。プロの仕業なんだ」


ルネの瞳が細くなり、やがて口元がわずかに歪む。

「なるほど……やっぱり、お前たちか。見抜くとは思っていた」


嵐の轟音が窓を揺らし、緊張が頂点に達する。


ルネは笑みを消し、低い声で語りはじめた。

「……十数年前、このホテルで妹セリーヌは働いていた。まだ十五にもならん少女だった。家が貧しかった俺たちにとって、ここで働けることは救いだったはずだ」


彼の目が闇の中でぎらつき、声が震える。

「だが支配人オクターヴは……奴は妹を道具のように扱った。奴の命令に逆らえば、解雇と家族の破滅が待っていた。俺は軍にいたから助けてやれなかった。妹は孤独に耐えて……それでも、必死に働き続けたんだ」


オクターヴが顔を青ざめさせ、口を開く。

「ち、違う!あの娘は勝手に」


「黙れぇっ!!!」

ルネの怒声が廊下を揺らし、全員が息を呑む。


彼は荒く息をつきながら続ける。

「その夜、妹は姿を消した。だが俺は知っている……ジャンヌ、お前が見て見ぬふりをしたことを!支配人と客の醜い欲望の犠牲にされた妹を、誰一人として救わなかった!」


クラリスが顔を覆い、泣き崩れる。

「……母も、知っていた。でも口を閉ざすしかなかったの」


ルネは血走った目で彼女を睨みつけ、しかし次の瞬間、深く頷いた。

「そうだ。沈黙する者、利用する者、すべて同罪だ」


彼の声は震えながらも鋭く、狂気と悲哀を帯びていた。

「だから俺は、同じように切り刻んでやった。妹がバラバラにされたのと同じように。奴らの罪を、身体に刻んでやったんだ!」


ルネの手がポケットに伸び、そこから冷たい輝きが走る。

血で鈍く光るサバイバルナイフ。


「そして最後だ……!オクターヴ、お前だけは俺の手で終わらせる!」


ルネが咆哮とともに突進する。

だがその刹那、アルおじ、アイゼンハワードが立ち塞がった。


「ここまでじゃ、ルネ!」


同時にカズヤも身を翻し、ルネの軌道を塞ぐ。


嵐の轟きと荒い呼吸の中、三人の影が廃墟の廊下でぶつかり合う。

復讐の業火は、最終の審判を迎えようとしていた。



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