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【ランキング12位達成】 累計52万6千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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第6話 支配人の罪

廃墟ホテルのロビー。雨風が打ちつける音と、灯油ランプの揺らめく炎だけが空間を照らしていた。


ツアー参加者たちは互いに顔を見合わせながら沈黙を続けていたが、やがてクラリスが震える声で口を開いた。


「……セリーヌは、ここで働いていたんです。母はずっと言っていました。あの子は……支配人に目をつけられて、無理をさせられていたって……」


視線が一斉にオクターヴに集まる。老支配人の肩がびくりと震え、眼鏡の奥の瞳が揺らいだ。


「バ、バカな! あの小娘が勝手に消えただけだ! 私は何もしていない!」

 声は怒鳴り声だったが、どこか怯えと動揺が混じっていた。


 テオが机を叩いた。

「ならなぜ、記録を改ざんした! 帳簿に不自然な空白があった! あなたが何かを隠していたのは明らかだ!」


「ち、違う! あれは……あれは、ホテルの名誉のためだ!」

オクターヴの額には大粒の汗が浮かび、手が小刻みに震えている。


カズヤはじっと彼を見つめた。

「……“小娘”なんて呼び方をするんですね。まるで、人間として扱っていなかったように聞こえる」


「なっ……!」

その指摘に、オクターヴは言葉を詰まらせた。


クラリスが椅子を握りしめ、嗚咽を漏らす。

「母はずっと泣いていました……“あの子は使い潰された”って。支配人、あなたが」


「黙れ! 私に責任を押し付けるな!」

オクターヴの叫びは、薄暗いロビーに反響した。


そのとき、アイゼンハワードが低く言葉を落とした。

「……なるほど、確かにこやつは罪を抱えておる。だが――」


彼の鋭い眼差しが、ツアー参加者全員をゆっくりと見渡した。

「この血塗られた裁きの手を下しておるのは、別の者じゃ。オクターヴは獲物にすぎん」


場の空気が凍りつく。

疑惑の矛先はオクターヴに集中したまま、しかし同時に“真の復讐者”の影が、なお誰の背後にも忍び寄っていることを誰もが悟った。



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