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【ランキング12位達成】 累計54万4千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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第5話 第二の犠牲者

夜半すぎ。


廃墟ホテルの暗い廊下に、不気味なざわめきが広がった。

「……マリアさんが、いない?」

クラリスの震える声に、全員が立ち上がった。


食堂に集まっていたはずのマリアの姿が消えていた。ロビーも、客室も探したが見つからない。

嫌な沈黙が、吹雪よりも重く胸にのしかかる。


「……下だ」

低い声でアイゼンハワードが呟く。杖を握る手に力がこもった。

「裁きは、地下で執行されたようだ」


地下室の扉を押し開けた瞬間、全員が息を呑んだ。

湿った空気と鉄錆の匂い。

ランタンの灯りが照らし出したものは、あまりに異様な光景だった。


壁に貼り付けられた、バラバラになったマリアの遺体。

血で濡れた髪が垂れ、目は虚空を見開いたまま。


「ひっ……!」

クラリスが顔を覆い、震えながら後ずさる。


ジャンヌと同じく、肉片は意図的に配置されていた。だが今回はさらに露骨に、床と壁に血で書かれた文字があった。


「沈黙する者、利用する者、すべて同罪」


「これはただの無差別な殺人ではない。復讐者は“罪の選別”をしておる……。次は誰か、それを考えねばならん」

 アイゼンハワードが低く言った。


「復讐者は、ただ殺すのではない。過去を踏みにじった者に“裁き”を示している」


カズヤは血文字を凝視し、唇を噛む。

「マリアさんは……このツアーを企画した。セリーヌの事件を、心霊スポットの売りにして……」


言葉を続けられなかった。


ルネは険しい顔をし、吐き捨てるように言った。

「だから狙われたってことか。死人を食い物にした代償だ」


テオが青ざめた顔でノートに震える字を書きつける。

「復讐者は……“過去を隠した者、利用した者”を裁いている……。次は誰だ……?」


誰も口を開かない。

だが全員が感じていた。

この復讐の連鎖は、まだ終わっていない。


そして沈黙を破ったのは、クラリスのすすり泣きだった。

「……お母さんも、このホテルにいたの……もしやっぱり、私たち家族も“罪”に含まれているの?」


その言葉に、空気はさらに重苦しく凍りついた。

疑念と恐怖は、次なる犠牲を待ち構えているかのように、参加者たちを包み込んでいった。



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