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【ランキング12位達成】 累計54万4千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:ミステリアスツアー殺人事件』

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第1話 不気味な旅の始まり

挿絵(By みてみん)


バスの車窓を打つ雪は、夜の闇をいっそう深くする。

停留所に停まったツアーバスの扉が重々しく開き、カズヤとアルおじ、アイゼンハワードが乗り込むと、すでに数名の参加者が座席に腰を下ろしていた。


添乗員のマリアが立ち上がり、柔らかい笑みを浮かべて二人を迎える。

「ようこそ、“心霊スポットミステリーツアー”へ。これから皆さまにご一緒いただくのは、山奥の廃墟ホテルで、かつて少女失踪事件があったと噂される場所です」


参加者たちは一様にざわめいた。


【ツアー参加者の顔ぶれ】


ルネ:無口な中年のバス運転手。鋭い目つきだが職務には忠実。

マリア:ツアー添乗員。凛とした態度だが、どこか影を背負っている。

オクターヴ:かつてホテルで支配人を務めていた老紳士。沈痛な面持ちで、何か言いたげだが言葉を飲み込む。

ジャンヌ:華やかな服装をした裕福な未亡人。場の空気を読まず大げさに怖がる。

テオ:若き歴史研究家。古文書や土地の伝承に詳しく、常にノートに記録を取っている。

クラリス:元従業員の娘。ホテルで育った記憶があるらしいが、多くを語らない。

カズヤ:巻き込まれ体質のわたしの孫。冷静だが皮肉屋。

アイゼンハワード(アルおじ):魔族のおじさん。重厚な雰囲気をまといながらも、時折とぼけた言葉で周囲を和ませる。


「いやあ、霊なんて出るんですの? 本当に?」

ジャンヌが大げさに身をすくめると、車内の緊張感が一瞬緩む。


そのとき、アルおじが静かに呟いた。

「ゾンビはおるが、霊などおらん」


その低く響く声に、思わず参加者たちの顔に微笑みが浮かんだ。場の空気がふっと和らぐ。

カズヤは呆れ顔で肩をすくめたが、内心少しだけ安心した。


やがてバスは山道へと入っていく。街灯のない漆黒の闇、雪の降り積もる森を抜けると、やがて朽ち果てた巨大な建物が闇の中に姿を現した。


廃墟ホテルへ。


ひび割れた外壁と割れた窓。黒い影のように聳えるその姿は、噂に違わぬ不気味さを放っていた。


参加者たちはそれぞれに不安を抱きながら降車し、懐中電灯を手にホテルの中へと足を踏み入れる。


廊下の空気は湿り気を帯び、床板の軋む音がやけに大きく響いた。

古びたシャンデリアが風に揺れ、まるで亡霊が通り過ぎたかのように影が震える。


その時。


「デキァアアアア……!」


廃墟の奥から、甲高い「悲鳴」が突如として響いた。


参加者全員の顔から血の気が引く。

マリアが慌てて声を上げる。

「悲鳴!だ、誰ですか!? 今のは……!」


カズヤは息を呑み、アルおじは眉をひそめた。

雪深い山奥のホテル。外界との連絡は絶たれた。

彼らはすでに、逃げ場のない「殺人の舞台」に足を踏み入れてしまったのだ。



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