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【ランキング12位達成】 累計54万9千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:オルゴールは死を奏でる』

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【最終話】 愛と諜報の終わり

噴火寸前の火山島からの脱出艇が、黒煙を裂くように海上へ滑り出す。

背後ではカジノが火柱とともに崩れ落ち、赤黒い火山灰が空を覆っていた。


だがリディアの姿は、そこにはなかった。


船内に残されていたのは、一枚の古びたカード。

表面には彼女の筆跡で、たった一行。


「また別のテーブルで会いましょう」


カードの端には、ルージュの痕が淡く残っている。

アイゼンはそれを指先でなぞりながら、目を閉じた。

不意に胸の奥が重くなる。

勝負には勝った。しかし、彼女という“賭け”にはまだ決着がついていない。


リディアは必ず何処かで、生きている。

だが、次に会うとき、それは敵としてか味方としてか。


■■■


数日後、ロンドン。

MI6本部の無機質なガラス窓越しに、灰色の海が広がっていた。

嵐を孕んだ波が白く砕け、冬の光が水面に冷たく反射する。


作戦報告を終えたアイゼンハワードは、エバグリーンと並んで埠頭近くの小さなバーに入った。

古びた木のカウンター、わずかなジャズ。

彼はグラスに琥珀色の液体を注ぎ、静かに揺らす。


「……で、あの女は結局どこに?」

とエバグリーン。


「さあな。だが、また必ず現れる」

アイゼンは短く答え、グラスを傾ける。


舌の上でウイスキーの熱が広がり、喉を抜ける頃には、表情はもういつもの冷静な諜報員のそれに戻っていた。


カウンターに伏せた手の中には、あのカード。

その裏面に描かれたルーレットの図柄が、淡く笑っているように見えた。


外では冷たい風が灰色の海を渡っていく。

そして、再び火薬と策略の匂いがする別の戦場へと、彼は歩み出すのだった。



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