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完結【51万5千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:オルゴールは死を奏でる』

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第7話 エバグリーンの疑念と嫉妬の炎

監視室の薄暗い照明の下、エバグリーンは拳を握り締め、モニターの向こうのアイゼンハワードに向かって叫ぶように言った。


「アイゼン!あなたはリディアに操られてる。

ただの“元恋人”なんかじゃないわ。これはヴェールの罠よ、間違いない!

それなのに、あなたは彼女を信じて、任務を蔑ろにしてる。私がどれだけ辛いかわかる?」


彼女の声には怒りと悲しみ、そして激しい嫉妬が入り混じっていた。


アイゼンは苦しい表情を浮かべながらも、冷静に答えた。


「エバグリーン、君の感情は痛いほどわかる。だが、俺はリディアを信じる。理由があるんだ」


エバグリーンは悔しそうに目を伏せ、一歩近づいて言う。


「理由?それってまた過去の甘い幻想じゃない?

私だって……あなただけを信じてる。なのに、リディアのことを考えるたびに心臓が締め付けられる。あなたは私のことも、任務のことも、どうでもいいの?」


アイゼンは一瞬言葉に詰まり、視線を逸らした。


「そんなことはない……ただ、君にも理解してほしいんだ。俺は君たち二人を天秤にかけているわけじゃない。だが、リディアにはまだ、終わらせなければならないことがある」


エバグリーンは涙をこらえながら声を震わせる。


「私のことを忘れないで。お願いよ、アイゼン……」


揺れる信頼と覚悟

アイゼンは静かに手を伸ばし、エバグリーンの手を掴む。


「君は俺の大切なパートナーだ。信じてほしい。俺は絶対に君を傷つけたりしない。だけど、俺たちの任務は簡単じゃない。信じられない相手とも向き合わなければならない時もある」


エバグリーンは目を閉じ、深呼吸する。


「……わかった。あなたの信じる道についていく。

でも、リディアには気を付けてよ。私が見張ってるから」


アイゼンは微笑み、力強く頷いた。


「俺のことは心配しなくていい。お前だけを見ている」


第七倉庫へ向かう二人

港の冷たい夜風の中、二人は歩調を合わせる。


エバグリーンは小さく呟いた。


「私、負けたくないの。あなたの心の中で……」


アイゼンは微かに笑みを浮かべながら答えた。


「その気持ちがある限り、俺は負けない。二人でこの闇を切り裂こう」


重い鉄の扉を開けるとき、彼らの決意は固く、深い絆で結ばれていた。


二人は冷たい風に吹かれながら、互いの決意を胸に第七倉庫へ向かう。


「罠かもしれない。だからこそ、俺たちはここにいるんだ」


アイゼンハワードの声は静かに、だが力強く響いた。


「最後までお前と共に戦う」


エバグリーンは深く息を吸い込み、暗い倉庫の扉を開ける。


「行きましょう。たとえ敵だとしても、答えを見つけるために」


闇が彼らを包み込んだ。


倉庫内は冷たい空気が漂い、木箱の影が不規則に伸びていた。

エバグリーンとアイゼンハワードは慎重に歩みを進める。


「リディア……?」


アイゼンの呼びかけに応えるように、影が一つ、ゆっくりと姿を現した。

黒のレザージャケットに身を包み、顔には冷たい決意が浮かんでいる。


「待っていたわ、アイゼン。そして、エバグリーン」


彼女の声は低く、しかしどこか苛立ちと哀しみを帯びていた。


三者は数歩の距離で向かい合う。

エバグリーンはリディアを鋭く見据え、銃を抜くが、アイゼンが制止する。


「撃つな、今は話を聞く時だ」


リディアはゆっくりと手を挙げる。


「私はヴェールのために動いているわけじゃない。

裏切り者と言われても構わない。けれど、これは…私の贖罪のための戦いよ」


エバグリーンは疑念を隠せず、冷たく言い放つ。


「言葉だけなら誰でも言える。

本当に信じていいのか、あなたを」


リディアの瞳が一瞬揺らぐ。


「信じるかどうかは、あなたたち次第。

でも、今すぐ資金の流れを示すデータを見せるわ。

これでヴェールの計画を止められるなら、それで十分」


リディアはバッグから小型端末を取り出し、スクリーンを二人に見せる。


複雑に絡み合う資金洗浄ルートが映し出され、赤いラインが幾重にも走っている。


「これがヴェールの資金の中心。ここを潰せば、テロへの資金は断たれる」


エバグリーンは端末をじっと見つめながら、ため息を漏らした。


「ここまで来て、何かが間違っていたら……」


その時、遠くから複数の足音が響き、倉庫の扉が乱暴に開かれる音がした。


「時間切れよ」


闇の中からヴェールの傭兵たちが姿を現し、激しい銃撃戦の火蓋が切られた。



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