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【ランキング12位達成】 累計53万PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:オルゴールは死を奏でる』

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第2話 高級スーツと冷たい銃口

予選会場を後にしたアイゼンハワードとエバグリーンを、黒塗りのリムジンが待っていた。


夜のヴルカーノ島、溶岩流が遠くで赤く光り、海面を金と黒に染める。

窓越しに見える高級リゾートホテル《ラ・ヴィル・エターナ》は、海上に浮かぶ宮殿のようにライトアップされ、まるで異世界の城塞のようだった。


ホテルロビーは天井高く、金箔をあしらった柱が並び、滝のように流れるシャンデリアの光が床を照らす。

ピアノの旋律と、シャンパンの泡が弾ける音が重なり、外の火山島とは別世界の静けさを演出していた。


コンシェルジュが恭しく微笑み、二人を迎える。

エバグリーンは深紅のドレスの裾を揺らしながら、鍵を受け取った。


「スイートルーム、最上階です」


エレベーターに向かう途中、白い制服を着たホテルボーイが荷物用カートを押して近づく。


一瞬、アイゼンハワードの魔族の血がざわめいた。

(呼吸が浅い…視線が定まっていない…)


ボーイは軽く会釈し、すれ違いざま


冷たい金属音が空気を裂いた。


袖口から伸びた細い銃身が、至近距離でアイゼンハワードの心臓を狙う。

その瞬間、時間がスローモーションに変わる。

銃口の闇、火薬の匂い、エバグリーンの驚愕した瞳。


ドンッ――!

乾いた銃声がロビーの静寂を粉々に砕く。


だが弾丸は彼の胸に届く前に、目に見えぬ光の膜に弾かれた。

魔族の血とMI6の技術を融合させた魔導防御スーツ。

袖口の紋章が青白く輝き、弾丸を宙で弾き飛ばす。


「惜しかったな」

アイゼンハワードは冷ややかに呟くと、ジャケットの内ポケットに手を伸ばした。


ボーイの瞳に恐怖が走る。

エバグリーンは片足を引き、隠しナイフを抜き取る。


ロビーの観光客たちが悲鳴を上げ、スーツケースが床に転がる音が響く中、

次の銃声か、魔法の閃光か空気が爆ぜる寸前で場面は暗転した。


銃口を弾き返した瞬間、アイゼンハワードは手首をひねり、ボーイの腕を逆方向に折り上げた。

金属音とともに小型サイレンサー付きの拳銃が床を滑る。

暗殺者は痛みに声を上げる代わりに、足元から刃を繰り出し、脛を狙う。


アイゼンハワードは一歩後ろに引き、カーペットを蹴って回し蹴りを叩き込む。

暗殺者の身体が荷物用カートごと吹き飛び、近くのシャンデリア支柱に激突。

客の悲鳴、倒れるグラス、シャンパンの飛沫――一瞬でロビーが戦場に変わった。


魔族の力、解禁

エバグリーンは踊るような動きで階段手すりを飛び越え、別方向から暗殺者に迫る。彼女のナイフが空気を切り裂くたび、金の装飾が光を反射する。


「こいつ、一人じゃない!」

彼女が叫んだ瞬間、二階の回廊から二人目、三人目の暗殺者が現れ、クロスボウと小型魔導銃を構える。


アイゼンハワードは袖口の魔導紋章を撫でると、淡い青の盾が半球状に広がる。矢も魔弾もそれに触れた瞬間、花火のように弾けて床に落ちる。


ワルツのリズムで

ホテルのグランドピアノから奏でられていたワルツが、まだ途切れずに流れている。だが、その旋律に合わせるように、三人の暗殺者と魔族スパイの死闘が展開される。


1拍目

左側の暗殺者をカウンターエルボーで沈める。


2拍目

回し蹴りで正面のクロスボウ使いを吹き飛ばす。


3拍目

最後の一人が懐に迫るが、エバグリーンのナイフがその喉元を止める。


ピアノの最後の和音と同時に、暗殺者たちが床に崩れ落ちた。


ロビーは破片と煙の匂いに包まれ、ホテル従業員が遠巻きに見守る中、

アイゼンハワードは倒れた暗殺者の胸ポケットから、黒いカードを抜き取る。

そこには銀色の文字で"ヴェール"


彼はそれを指先で弄びながら、エバグリーンと目を合わせた。


「どうやら、ゲームはまだ始まったばかりじゃの」



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