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第9話 居眠り

金と黒の大理石が敷き詰められた、神殿のような荘厳な玉座の間。

そので中心黒き翼をたたんで、玉座にふんぞり返る堕天使アザリエルが、静かにいびきをかいていた。


「……寝てるな」

リスクは、冷や汗をかきながらそっと言う。


「警戒してる様子は……ない。これはチャンスかもしれない」

勇者アルベルトが小声で頷いた。


その奥。玉座のさらに後ろ――

巨大な黒鉄の宝箱が一つ、怪しく光を反射していた。


(きっと、あそこに……!)


「行くぞ……」

俺は空気のように音も立てず、床をすべるように宝箱へと近づく。


キィ……

慎重に開けたその中には――輝く七色の水晶球。星の羅針盤。


(あったぁ! 星の羅針盤GETだぜ!)


俺はすぐさまアルベルトと合流し、シスターマリアを手招きしながら、静かに退却を開始する。

堕天使アザリエルの前を通らぬよう、玉座をぐるりと回り込み、円形の出口へと向かって――


「もうすぐ階段だ……! よし、ここまでくれば……!」

その時だった。


「お宝をもってどこへ行く気だァァ!この野郎ォォォ!!」


――響き渡った、グレイス・オマリーの豪快な寝言。


「うそだろぉぉぉぉお!?!?!?」


バサァァァァッ!!!


漆黒の羽根が大きく広がる音と共に、玉座のアザリエルが目を覚ました。

その瞳が、まるで深淵のごとくこちらを射抜く。


「……ほう。人間どもか。よくも、私の眠りを妨げたな……」


冷たい、けれど不思議と理知的な声。

その指がこちらを指すと、周囲の空気が一瞬で張りつめた。


「その手にあるのは……私の大切な宝。星の羅針盤だな」


「えーと……その……これは、ちょっと見たかっただけで……」


シスターマリアがスッと前に出る。


「リスクさん。泥棒はダメです」


「ぐっ……そ、それは……正論……」


アルベルトも苦笑いしながら頭をかいた。


「返すよ返す! はい、どーぞアザリエル様!」


俺は羅針盤をそっと元の宝箱へ戻した。


「……ごめんなさい。悪気は……まあ、正直ちょっとはありました」


「素直だな、人間」


アザリエルがゆっくりと立ち上がる。

その姿は気高く、恐ろしく、神聖で、そして美しい。


「素直であることはよろしい。だが罪を償う覚悟はあるか?」


「えっ、やっぱり戦うの!?」


アザリエルが右手を掲げると、空間が裂け、無数の魔方陣が展開される。

紫電が走り、黒い雷が空間を砕いた。


「ここに聖なる塔の審判を執り行う!人間どもよお前たちの運命は、剣で語れ!」


「来るぞ!!全員構えろ!」

アルベルトが剣を引き抜く。その刀身に聖光が宿る。


「マーリン! グレイス! 起きてぇぇぇ!!」


「んごぉ……って、えっ!? なんで私が殴られてるのぉぉ!?」


「おはようございます。今から地獄です」

シスターマリアが淡々と構えを取る。


ドンッ!!


アザリエルの翼が地を打ち、魔方陣から黒き獣が召喚される。


「さあ、人間。生き延びてみせよ!

この私、堕天使アザリエルの"裁きの風"を乗り越えられるならな!」


「うおおおおおおおおおおッ!!!」

勇者アルベルトが咆哮し、白銀の剣で突進する!


そして、運命の戦いの幕が今、上がる。

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